グアム島の生態系を丸ごと衰退させた、恐るべき外来ヘビ
生態系に連鎖的影響、公衆衛生と経済にも被害
鳥たちの受難は、生態系全体に連鎖的影響をもたらした。鳥類は森の庭師であり、送粉や種子散布といった不可欠な役割を果たしている。彼らが姿を消したことで、島の植生にも被害が及びはじめた。すべての種が絶滅したわけではなかったが、それでも被害は深刻だった。 ミナミオオガシラによる捕食が原因で、その他の鳥類、在来のコウモリ(マリアナオオコウモリなど)、トカゲも数を減らした。 捕食被害は、家禽やペットにも及んだ。興味深いことに、このヘビは島の東部などで草原・森林生態系を荒廃させただけでなく、電力設備にまで損害を与えた。 ■被害は公衆衛生と経済分野にも 1950年代には、ミナミオオガシラの個体数は膨大なものとなり、頻繁に停電を引き起こすようになった。このヘビには電柱を登る習性があり、電気機器に接触して回路をショートさせたのだ。 1978年から1997年までのあいだに、ミナミオオガシラが原因となった停電は1600件発生したと推定される。設備修理と生産性低下により、島は年平均450万ドル(現在のレートで約7億円)の経済的損失を被った。 ミナミオオガシラによる被害は、グアムに深い爪痕を残した。ほかの太平洋の島々をこの危険な外来種から守るため、米国政府は現在、毎年数百万ドルを費やしてグアム発の貨物の検査を実施している。 ミナミオオガシラは成人にとって危険な存在ではないが、個体数が多すぎるため公衆衛生上の脅威となり、ヒトとの衝突が生じた。ミナミオオガシラに遭遇して咬まれることを恐れて、住民たちが野外活動に不安を覚えるようになったのだ。 家屋に侵入することも多いため、いまや子どもたちまでもが脅威にさらされている。成人と比べて体格が小さいため、咬傷が重篤なものになりやすいのだ。学校や地方自治体は、ミナミオオガシラへの注意を呼びかける啓発活動を行っている。 ミナミオオガシラは、いまもグアム島が抱える深刻な問題のひとつだ。現在の個体数は数百万匹とされ、長年にわたりさまざまな方法で駆除が実施されてきたものの、十分な成果は上がっていない。 米魚類野生生物局は、現地の団体と協力し、いくつかの対策を講じてきた。画期的な手法として、ヘビに対して毒性をもつが鳥類と哺乳類には無害なアセトアミノフェンを仕込んだ毒餌を利用するものがある。 ミナミオオガシラによって絶滅し、現在飼育下のみで保護されている鳥のいくつかについて、再導入の取り組みが進められている。しかし、グアム島からミナミオオガシラが根絶される日が来る見込みはないため、再導入計画が成功するかは未知数だ。
Scott Travers