考察『光る君へ』22話 周明(松下洸平)登場!大陸の波打ち寄せる越前での運命的な出会いからの衝撃「日本語喋れるんかい!!」
羊肉に戸惑う
朱仁聡(浩歌)が主催する宴の様子が興味ぶかい。大陸の楽器……打楽器は編鐘(へんしょう)だろうか。そして、笙(しょう)! パイプのような吹き口がついている違いはあるが、同じものを第1話で円融帝(坂東巳之助)が吹く場面があった。そうだ、雅楽で演奏される楽器の多くは大陸から渡って来たのだ……と、胸ときめいた。 そして一番のご馳走として供される羊肉に戸惑う、為時とまひろ。 マトンはラムよりもニオイが……という問題ではない。日本では天武天皇4年(675年)に、牛・馬・鶏・犬・猿を食べることが禁じられて以来、たびたび獣肉食禁止令が出された。食べることが特に禁じられていなかった鹿、猪も徐々に雉などで代用されるようになる。第21話、宣孝(佐々木蔵之介)との別れの宴の膳に並ぶのも魚介類中心だった。獣肉を食べ慣れていないのだ。 それでも、船に乗せてきた羊を一匹潰してくれたのを断るのは、外交上問題があると判断し、すぐにひとくち食べて笑顔で「まあ美味しい」。まひろ、頑張ったよ……美味しくなかったんだろうなとすぐわかる言い方だったが、父上のフォローを本当によくやった。 即興で漢詩を作り、宋語で披露する。何十年にわたってのたゆまぬ努力が実り、為時が心の底から嬉しそうだ。 『本朝麗藻』や『今鏡』に、藤原為時が大陸からの客人に漢詩を贈った逸話が残る。 最初に宋語で商人たちに呼びかけた瞬間から思ったが、これはやっぱりあの源国盛(森田甘路)には無理な仕事だわ……。
藤原氏でも源氏でもない
国府で為時とまひろを出迎えた、越前介・源光雅(玉置孝匡)と、大掾(だいじょう)・大野国勝(徳井優)。 介も掾も、為時の越前守と同じく地方行政官の官位である。守(かみ)・介(すけ)・掾(じょう)・目(さかん)の四等官があった。 ところで、都では姓のある登場人物はほとんどが藤原か源だったので、冒頭で登場した通事の三国若麻呂といいこの大野国勝といい、とても新鮮だ。 そして三国も大野も、福井県の地名にその名がある。地名好きとしては見逃せない。現在の坂井市三国町には、江戸から明治時代にかけて、北前船で財を成した豪商らの栄華を感じさせる建築物が残る。サスペンスドラマの聖地である断崖絶壁、東尋坊も三国町だ。大野市は、越前大野城を中心とした、城下町の風情豊かな町である。越前大野城は、盆地の真ん中の小高い山の上にあるため、初冬から春先には、雲海の中に城が浮かんでいるように見えることがあるという。旅をして、いずれもその町ならではの趣きを堪能した。彼らはあの地で生まれたのだろうか、想像が膨らみワクワクする。 しかし、修理中だという宋の船を見せまいとする役人たち、通事の三国の様子もおかしかったし、やっぱり何かあるだろうコレは。