「残り15%のこだわり」を妥協したら、「ソニーではなくなってしまう」…最高幹部が「重視する」、一見「矛盾」している「2つの鉄則」
「バーチャルプロダクション」とはなにか
また、昨今は映画撮影で「バーチャルプロダクション」技術も多く使われるようになった。 バーチャルプロダクションとは、巨大で高解像度なディスプレイとリアルタイムCG技術、位置や画角を把握できるカメラを組み合わせた技術だ。映像の前で俳優が演技するようすを撮影すると、カメラからは、書き割りの前で演技をしているのではなく、「カメラの動きに合わせて変化する世界の中で演技している」ように見える。 ロケに行きづらい場所での撮影を再現したり、CG合成のコストを大幅に軽減したりするなど、いまや映画やドラマの制作に欠かせない技術となっているのだ。 バーチャルプロダクションには、多数の技術が必要になる。撮影に使う「位置把握用センサー付きカメラ」に加え、リアルタイムCGのコントロール技術、CGを効率的に作るためのキャプチャ技術など、多岐にわたる。 これらさまざまな技術の集合体が、北野CTOのいう「ワールドクリエイション」だ。 とはいえ、そうした技術があるというだけで、「クリエイター重視の体制」が確立されているとはいえない。北野CTOが、重要な点を指摘する。
「仲間」と思ってもらえたら
北野CTO「ポイントは、いかにクリエーションの現場に入っていくか、ということです。別の言い方をすれば、エンジニアがクリエイターから『仲間である』と思ってもらえるような現場への入り方をしていけば、そこから思ってもみなかったような技術の使い方を見つけられるはずです」
「エージェントAI」が広げる世界
新しい技術のなかでも、中核となるのは「AI」だ。ソニーグループも「Sony AI」という専門部隊を作り、世界中から研究者を集めて技術開発に取り組んでいる。 北野CTO「現在はあらゆる産業において、AIが使われるようになる『初期状態』にあります。我々もAIを軸に研究開発をしていますが、AIとクリエーションの掛け合わせには、撮影・CGのレンダリンクから音声技術まで、さまざまなところに可能性があります」