「残り15%のこだわり」を妥協したら、「ソニーではなくなってしまう」…最高幹部が「重視する」、一見「矛盾」している「2つの鉄則」
「グランツーリスモ」の頭脳を実車に搭載?
そこからさらに可能性を広げれば、「実車にGT Sophyを搭載して走る」ことも不可能ではない時代になっている。 北野CTOは、「あくまで可能性であり、ビジネス化すると決まっているわけではない」と断りつつも、次のように将来を予想する。 北野CTO「現在はゲームも複雑化しています。ゲーム世界を自由に動き回ってプレイできる『オープンワールド型』のゲームも増えました。 ただし、そうしたゲームは開発中のテストも難しい。人間のようにふるまうゲームAIは、ゲームのテストや品質保証にも使えるでしょう。ゲーム世界を認識して動作するエージェントAIは、ゲームの中に存在する『ノンヒューマン』としてのAIのほかに、そうしたゲーム開発向けの存在も考えられます」 だが、ソニーが取り組むこれらの技術開発は現在、きわめて競争の激しい分野だ。AIにしろCGにしろ、コアな企業はソニー以外にも存在している。GoogleやAppleなどのビッグテックも巨大な競合相手だ。 そうした状況下で、「ソニーならではの価値」をどう考えればいいのだろうか? さらに、新しい技術開発「以外」の部分はどう考えるべきなのだろうか?
「ソニー」ではなくなってしまう
北野CTO「新しい領域は進化が早いので、もちろん手を抜けません。これからAIを主軸に進んでいくでしょう。 ただ、ソニーのような大企業には、また別の価値もあります。それは、「これまでの継続的な価値が積み上がっている」こと。音声や映像などのノウハウは、構築するまでにすさまじい努力と蓄積が必要です。 こうした価値はなかなか脚光を浴びないものですが、インクリメンタル(漸進的)な価値をもち、ビジネスとして強みを発揮する部分です。 現在は『安価ならば、出来は85点まででいい』という領域もあると思います。しかし、そういう部分の質で妥協してしまうと『ソニー』ではなくなってしまう。残り15%にこだわる技術者・開発者はたくさんいます。 『どうやったらこんなことができるの?』『これすごいけど、どうやって商品にしようか」というものが、開発部門にはびっくりするくらいあるんですよ」 そう語りつつ、北野CTOは「ただですね」と、以下のように補足した。