運用終えた月探査機「SLIM」プロジェクト解散を前にJAXAが会見で総括
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2024年12月26日、小型月着陸実証機「SLIM」のプロジェクトに関する記者説明会を開催しました。 H-IIAロケット47号機打ち上げ成功 JAXAの「XRISM」と「SLIM」を搭載(2023年9月7日) 会見にはJAXA宇宙科学研究所(ISAS)所長の國中均さんと、SLIMプロジェクトマネージャーの坂井真一郎さんが登壇。日本初の無人探査機による月面軟着陸、世界初のピンポイント着陸技術実証(精度100m以内)を成し遂げたSLIMのプロジェクトはJAXA内での手続きが完了し次第解散する予定だということで、総括として改めてSLIMの成果や着陸直前のトラブルについての説明が行われました。
SLIMとは
SLIMは月面でのピンポイント着陸技術の実証を目的とした実証機です。JAXAのX線分光撮像衛星「XRISM」とともに「H-IIA」ロケット47号機に相乗りする形で2023年9月7日に種子島宇宙センターから打ち上げられたSLIMは、2023年12月25日に月周回軌道に到達。年が明けて日本時間2024年1月20日0時20分頃、日本の探査機として初めて月面に軟着陸することに成功しました。着陸地点は神酒(みき)の海付近にあるシオリ・クレーター(Shioli、直径約300m)の近くです。 JAXAによると、近年の月探査機の着陸精度が数km~十数kmであるのに対し、SLIMが目指した着陸精度は1桁も2桁も良好な100m。その鍵のひとつはカメラで捉えた月面の様子をリアルタイムで自律的に分析し、クレーターが分布するパターンをもとに自身の位置を測定する画像照合航法です。同航法を実現するために、地上用のものと比べて性能が限られる宇宙用のCPUでも迅速な画像処理を行うためのアルゴリズムが開発されています。さらに、自律的な航法誘導制御や、推力の細かな調整が可能な推進システムも高精度着陸の鍵として採用されました。 また、着陸したい場所は必ずしも平坦とは限りません。科学的に興味深いエリアとして、クレーター内部のように傾斜している場所に着陸したい場合もあるからです。そこでSLIMでは、月面に接地する直前に探査機の姿勢を前に傾けることで、主脚で接地した後に前方の補助脚が接地して安定するという「2段階着陸」が考案・採用されました。月面に垂直に降りるのではなく意図的に倒れ込むことで、従来の方法では着陸が難しい傾斜した斜面にも安定した姿勢で接地することを目指したのです。