ブルガリアの古都で失われた教会を発見。帝国時代の高い技術力を証明する構造や装飾
中世の修道院の一部と思われる教会の遺構が、ブルガリアの古都ヴェリコ・タルノヴォで発見された。歴史資料からすると、14世紀の第2次ブルガリア帝国皇帝イヴァン・アレクサンダル(在位1331年~1371年)の時代に建造されたと見られる。同帝国の最盛期、首都ヴェリコ・タルノヴォは政治、経済、文化の重要な中心地として繁栄したが、14世紀末にオスマン帝国に制服され、その支配下に入った。 ニューズウィーク誌が伝えたところによると、今回の遺跡発掘で見つかった教会の保存状態は良好で、その構造から壁絵や装飾のような細部に至るまで、当時のタルノヴォ建築がいかに精巧なものだったかを物語っているという。これまで出土した部分からは、精密に切断された石のブロックやレンガで壁が作られていたことが推測できる。 また、教会の北側で発見された一区画には、石柱に支えられた丸天井の建造物があったと考えられる。出土品にはブロンズの十字架、聖体拝領のスプーンや瓶、小さな薬瓶などもあった。 考古学研究者たちが遺構と当時の文献を調査したところによると、修道院の主要部分を構成していたのがこの教会だという。調査対象となった中世文書には、14世紀の高位聖職者で隠遁者であったタルノヴォの聖テオドシウスの生涯も記されている。 14世紀以降の文献にはこの教会に関する記述があるが、場所はこれまで特定されていなかった。今後の発掘調査で教会の全容が明らかになり、別の建造物や聖テオドシウスの墓が同じ敷地から見つかる可能性もある。
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