わずか3カ月で全線再開した「のと鉄道」、奇跡的な復旧はどう成し遂げられたのか 共通の目標は「新学期に間に合わせたい」日常を取り戻す光に
JR西日本は大阪、京都、兵庫などから作業員を大量に送り込んだ。特に線路の位置を直すのに苦労した。土砂崩れの被害が出た場所も大急ぎで修復した。レールの下に敷く石などの資材も不足していたが、国土交通省などの支援に助けられた。 ▽共通の目標 復旧費用を誰がどの程度負担するかについて、JR西日本、国や地元自治体といった関係者間の協議を棚上げにして工事を進めた。中田社長は「地域の公共交通を担う事業者として、復旧することが最重要課題だった」と強調する。 そうするうちに徐々に道路の状況が改善し、バスの代替輸送の検討もすることに。石川県内で路線バスを運行する北陸鉄道の関係者が「全面バックアップします。なんでも言ってください」と手を差し伸べてくれたことから、1月29日には代行輸送を開始した。 のと鉄道は定期の利用者が7割を占める。特に通学定期の高校生が多い。復旧作業に関わった人は「新学期、入学式までに間に合わせる」という共通の目標に向けて突き進んだ。人海戦術と社員らの強い思いが早期の復旧を実現させた。
2月15日に七尾駅と能登中島駅間で運転を再開した。4月6日には穴水駅まで全区間での運行が再び始まった。一部区間では速度を落として走行する必要がある。当面は1日14往復の臨時ダイヤで地震前に比べて運行本数は少ないが、夏ごろには通常ダイヤに戻そうとしている。 ▽観光のけん引役に 和倉温泉をはじめ沿線にある観光地の復興は途上にあるため、観光客の利用が大きく増えるかというと難しい状況ではある。ただ今後、のと鉄道の存在が能登半島の観光の「けん引役になれたら」と中田社長は意気込む。 線路に沿って約100本の桜が植えられている穴水町の能登鹿島駅。「さくら保存会」の堂前勇次郎会長(82)は「電車が止まっていたのはさみしかったから開通はありがたい。通学に使っていた学生たちが戻ってきてほしい」と期待する。再開に合わせ、花壇には沿線住民によって色とりどりの花が植えられ、ホームには「ありがとう!頑張ります」の文字が飾られた。