『光る君へ』で皇太后になった彰子が藤壺を出て移った〈枇杷殿跡〉は京都御苑にある。世界遺産である仁和寺には紫宸殿が
◆仁和寺に伝わる『源氏物語』関連の資料 「若菜下」では、こんなエピソードが描かれています。 朱雀院の「五十賀」(50歳のお祝い)のため、「西山なる御寺」で演奏会を開くことを決めた光源氏。リハーサルも兼ねて、六条院に住まう女性たちが楽器を奏でる内輪の宴を開催します。父・朱雀院を喜ばせるため練習を重ねた女三の宮のほか、紫の上、明石の上、明石の女御が勢揃いし、すばらしい演奏を聴かせる――「女楽(おんながく)」と呼ばれる華やかな場面です。 この『源氏物語』の写本をはじめ、仁和寺に伝わる数多の宝物のなかには、文学に関するものが少なくないとか。そこで、現在、仁和寺霊宝館では「『仁和寺と物語』~源氏物語を中心に~」と題した名宝展が開かれています(12月1日まで)。 学芸員の方の説明を受けながら、この名宝展を見学してきました。 有名な「車争い」の場面を描いた「車争図屏風」(室町時代)は14年ぶりの公開とのこと。『源氏物語』写本や註釈書はもとより、藤原道長の『法成寺殿日記』(別名『御堂関白記』)の写本など、『光る君へ』ファン垂涎のお宝ばかり……。 まひろと道長の思い出の地、石山寺にまつわる「石山寺縁起絵巻」(江戸時代)のほか、『伊勢物語』など他の物語の写本なども展示されています。 『源氏物語』の写本では、仁和寺に関連した「若菜下」の部分が選ばれるなど、じっくり見れば、展示品と仁和寺との関わりが浮かびあがってくる構成です。 大河ドラマの影響で、今年、京都では、『源氏物語』や紫式部に関連するさまざまな催しが開かれていますが、仁和寺でもこうした展示が見られるとは……。仁和寺が、仏像や経典だけでなく、文芸に関する多様な資料を所蔵していることに驚かされました。 紅葉の時期とあって、スモークと光で幻想的な世界を演出する「紅葉雲海ライトアップ」も開催中です(12月8日まで)。仁和寺といえば、樹高が低い御室桜があたり一面に咲き誇る春の景色が有名ですが、紅葉の美しさも格別です。この機会に仁和寺を散策し、平安文化の香りを感じてみてはいかがでしょうか。
SUMIKO KAJIYAMA
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