働く母親は「迷惑」か。時短勤務がもたらす不公平感の問題 (桐生由紀 社会保険労務士)
■大事なのは「迷惑」にならない仕組み作り
時短勤務が職場の迷惑になる原因は、時短勤務のしわ寄せの解消を従業員の自己努力で解決させていることです。 支える側の人達も「仕事かプライベートか」の二者択一を迫られ、結果、自分の私生活を犠牲にして時短勤務者のフォローに回り心身ともに疲弊しているのです。 支える側と支えられる側との間に生じたひずみを解消するのは従業員個人ではなく企業側の責任です。そのために大切なのは「迷惑」にならない仕組み作りです。しっかりとした業務設計を行わず時短勤務制度を導入してしまうと、子持ちの人は迷惑な存在になり周囲の人が不満を持つのは当然の結果なのです。
■働く母親が迷惑にならない仕組み作り3つのポイント
では、働く母親が迷惑にならない仕組み作りとはどういう物が考えられるのでしょうか。 ポイントは3つです。 (1)残業の常態化の改善 フルタイム=長時間労働となっている環境の改善が必要です。代替人員の確保や通常時から誰が休んでも耐えられる人員体制を作っておくことが大事です。一人が休んだだけで仕事が回らなくなる組織は非常にリスクが高い状態と言えます。 (2)支える側への金銭的支援と正当な評価 現実的には支える側が無報酬でフォローしなければならない場面もあります。負担が増える社員に手当を支給したり、評価に反映するなど支える側が気持ちよくフォローできる仕組みを見える形で実施するのが有効です。 (3)俗人化の解消と仕事の見える化 仕事を「見える化」することは非常に重要なことです。いつでも誰でも休めるチームは仕事が見える化されており、その人しかできない仕事がほとんどありません。タスクをチーム全体で共有する仕組みを整えたり、欠勤が許されない仕事は2名体制で行うなど業務の俗人化を極限までなくす仕組みが大切です。 今後、育児休業や時短勤務の利用者は着実に増え、働き方の多様化が進んでいくことは間違いありません。どうすればすべての従業員が子供の有無に関わらず、自分の家族や私生活を大事にしながらキャリアも諦めずに働き続けられるのかを考えるべきです。