スーパーGT、予選方式の一部調整について説明。今季中のタイム合算方式廃止も「かなり議論した」と明かす
2024年シーズンの後半から予選方式の一部に変更が加えられることになったスーパーGT。その経緯や規則の詳細について、プロモーターであるGTアソシエイション(GTA)が会見にて説明した。 【リザルト】スーパーGT第4戦富士決勝順位:CIVICがスーパーGT初優勝! 8号車ARTA完勝 スーパーGTでは今季から、その予選方式に大きなテコ入れがなされた。環境対策の一環として、各イベントで使用できるタイヤのセット数を減らすことを発端にして、Q1担当ドライバー、Q2担当ドライバーが同じタイヤで走り、両セッションのタイムを合算して順位決定するという新たな予選方式が生まれたのだ。 しかしながらこの予選方式は、導入当初から様々な点で賛否があったのも確か。GTAもファンや関係者の意見を吸い上げて柔軟に対応したいとの旨を明かしていたが、この度レギュレーションの一部改定に至った。 まず大きな変更点が、これまでQ1、Q2を同じタイヤで走る必要があったのが、両セッションで新品タイヤを投入できることになった点。厳密に言えば、予選に向けてマーキングできるタイヤが最大2セットになったという形だ。なおウエット宣言下ではこれらの制限はない。 流れとしては、Q1開始前に予選で使うドライタイヤのマーキングが行なわれる形。Q1、Q2で使うタイヤとして『A』『B』の識別が行なわれるが、1セットのタイヤに『A』『B』を両方マーキングすることもできる。つまりこれまで通りQ1、Q2を1セットのタイヤで戦うことも規則上は可能である。またマーキングの組み合わせ次第では、Q2に向けてリヤタイヤのみ新品にするという戦略も採れる。 一方でQ1で2セットのタイヤを使用することはできない。例えば、GT300クラスではQ1の組分けが廃止されて全車参加の20分のセッションとなるが、セッション前半に新品タイヤでタイムを出しておき、終盤にもう1セットを投入して、Q2はそのどちらかをユーズドで使う……といった作戦は採れないことになる。 上記の通りGT300のQ1組分けが廃止されるのは、走行順による有利不利が存在するのが否めないからだ。Q1を2組目で走ったチームは路面コンディション向上の恩恵を受けやすく、1組目よりタイムが上がる傾向にある。合算タイムで結果が決まるという性質上、Q1の“持ちタイム”に走行順の影響が出てしまう点はエントラントから不満があがっており、GTAも「組み分けに関するご指摘はかなりあった」としている。 GT300はQ1の結果を受けて、Q2は上位グリッドを決めるアッパー組と下位グリッドを決めるロワー組に分かれるのだが、これまで存在したアッパー組の下位とロワー組の上位を合算タイム順に並び替えるというルールは廃止される。 GTAはこれらの変更のコンセプトとして、「不公平さ・分かりにくさの是正」を挙げた。GTAレース事業部の沢目拓部長は次のように語る。 「ここ3戦、合算方式で予選を行なってきましたが、お客様やエントラント・チームの声、実際の予選の結果などを総合的に判断した結果、今回の変更に至っております」 「変更のポイントは2点ございます。まずルールとしての不公平さがあったのではないかというのが1点、あとは分かりにくさの解消というところです。これはお客様から非常に多くの声をいただいておりました」 ただ当然、そもそものタイム合算方式自体に分かりにくいという声があったことも確かだろう。沢目部長は、このタイム合算方式の撤廃に関しても「かなりの議論があった」と明かしたが、今季の予選方式の根幹となる部分をシーズン途中に変更するというのはスポーツの精神に反するだろうという考えもあり、今季中はこの方式を継続することにしたと語った。 「正直なところ、その(タイム合算方式の撤廃の)議論はかなりいたしました。(GTAの)スポーツ部会、取締役会でもかなり議論をさせていただきました」 「ただスーパーGTはプロスポーツでありますので、シーズン途中の変更で真逆のルールを取り入れてしまうということに関しては、スポーツの精神を考えると曲げないべきであるだろうということで、合算自体は維持をさせていただきたいと決定しています」 「ただし、ルールとしての分かりにくさや不公平さ、そういった直せる部分は手を入れていこうということで、このような形に決めさせていただいた次第です」 また会見の質疑応答の中で挙がったのが、各チームがQ2で新品タイヤを使っているのか、中古タイヤを使っているのか、見ている人たちが把握するのが難しいのではないかという点だ。 これに対してGTAは、タイヤのニュー/ユーズドをどのような形でファンに共有するかについては明言しなかったが、従来のノックアウト予選ではQ1を突破した車両がQ1後にQ2タイヤのマーキングをしていた一方で、この方式では予選前にQ1用、Q2用のマーキングを済ませることになることから、GTA側として予選前にタイヤの状況をしっかり把握する形を作れるだろうとした。
戎井健一郎
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