なぜ東京五輪で不発に終わったFW林大地はベルギーのシントトロイデン移籍を決断したのか…「自分を追い込み生きていきたい」
18チームで争われるベルギーリーグはすでに開幕していて、シントトロイデンは1勝1分け1敗の11位につけている。日本代表GKシュミット・ダニエル、清水エスパルスから加入して3シーズン目のDF松原后が全3試合に先発している一方で、昨シーズンに17ゴールをあげたFW鈴木優磨は一度もベンチ入りしていない。 昨シーズンの実績を引っさげてステップアップする時期だと鈴木、そしてシントトロイデン側も判断。移籍に備えているためで、鈴木の後を継ぐフォワードとして林に白羽の矢が立てられた。FC東京でGMなどを務めたシントトロイデンの立石敬之CEOも「前線で闘う姿勢は、ベルギーでも必ず信頼を勝ち得る」と林へ期待を寄せる。 チームのために走り、攻守で身体を張った上で、ゴールという絶対的な指標を介して自らの存在価値を証明。東京五輪の先に待つ、年齢制限のないA代表での戦いに挑む青写真を思い描く林は、森保監督から追加する形でかけられた言葉を思い出す。 「森保さんからは『でも、もっと成長しなきゃいけないよね』とも言われました。本当にその通りだと思っているし、向こうでは絶対に何かしらの壁にぶつかるはずなので、そのときにどのような自分が出るのかも楽しみにしている。自分はサッカーでしか表現できないので、サガン鳥栖に育てられた選手の一人として、向こうで活躍することが、これまで応援してくださった方々への恩返しになると思ってしっかりと頑張りたい」 鳥栖が1-0でFC東京に勝利した9日の明治安田生命J1リーグ第23節後には、ホームの駅前不動産スタジアムのピッチで壮行セレモニーが行われた。 ベルギーの地で心おきなく闘ってこいと言わんばかりに、3位に浮上した鳥栖のチームメイトたちの手で胴上げされ、宙を3度舞った林は決意を新たにしている。 「本当に充実した日々でした。1年目から数多くの試合に使ってもらったおかげで代表にも呼ばれたし、オリンピックにも出場できた。プロ選手としての自分を最初に必要としてくれたサガン鳥栖を中心に、自分のサッカー人生が少しずつ動いていったと感謝しています」 ゴールを渇望するあまりに、実際に決めた直後にはアドレナリンが出すぎて無意識のうちに雄叫びをあげまくる。あまりにも激しいゴールパフォーマンスから、いつしか野獣を意味する「ビースト」とあだ名された林は、東京五輪で披露できなかった雄々しい姿をヨーロッパから届けるべく、近日中にベルギーへと乗り込む。 (文責・藤江直人/スポーツライター)