なぜ東京五輪で不発に終わったFW林大地はベルギーのシントトロイデン移籍を決断したのか…「自分を追い込み生きていきたい」
もっとも、履正社高から大阪体育大をへて、鳥栖からのオファーを勝ち取った原動力は「野心」だった。最前線を託されるフォワードが抱く「野心」とは、もちろんゴールとなる。実際、林はゴールにかける熱い思いを語ったことがある。 「ベタな表現になってしまうけど、何がなんでも自分がゴールを決めて、チームを何とかしてやるんだ、という気持ちは常にあります。フォワードが評価されるのはゴール数。ゴールし続けなければ次はない、という覚悟は昔から抱いているので」 3日間の練習参加をへてオファーをくれた鳥栖への加入が内定し、JFA・Jリーグ特別指定選手になった直後の2019年8月11日。生まれ育った大阪で巡ってきたセレッソ大阪とのデビュー戦で、後半終了間際に初ゴールを決めて逆転勝利の呼び水となった。 前日には法政大サッカー部を退部し、鹿島アントラーズ入りしていた一学年下の上田がプロ初ゴールを決めていた。万能型の上田へ「嫉妬心を抱いていた」と明かす林は、内面に秘めた闘志を物語るように、こんな思いを抱いてデビュー戦に臨んでいた。 「(上田)綺世のゴールを悔しいと思わなかったら、フォワードとしてもう終わりだ」 正式にプロになった昨シーズンはチーム最多の9ゴールをマーク。鳥栖での活躍が評価されてU-24代表に初招集された今年3月。先発に抜擢されたU-24アルゼンチン代表戦では、前半終了間際に決めた先制ゴールで日本を3-0の快勝に導いた。 南米の強豪から奪ったゴールが東京五輪へとつながったが、その後の国際親善試合、そして本番をノーゴールのまま終えた自分自身にはもちろん納得していない。 「オリンピックでもいろいろな方から『よく動いているね』とか、あるいは『貢献しているね』と言っていただいたんですけど。自分のなかではやはりゴールを取りたかったし、何かモヤモヤしている部分がすごく大きかった」 東京五輪ではグループリーグを3戦全勝でトップ通過しながら、決勝トーナメント以降の3試合で1得点にとどまり、最終的には4位で53年ぶりのメダルを逃した。大会期間中に抱いた複雑な思いを明かした林は、新天地での目標を2桁ゴールに設定した。 「試合中にどれだけ走っても、ゴールしなければまったく評価してもらえない可能性もあるので、そこは危機感を持って臨みたい。しっかりと先発を勝ち取った上で、前線の選手である以上は、1年目から2桁ゴールは絶対に取りたいと思っています」