私が海外に進学する理由── 超難関大に挑戦した18歳、自分の「やりたい」はどう生まれた?
近年では、国内の大学への進学だけでなく、海外の大学を志望するケースも珍しくありません。また、オンラインで学べる大学が創設されるなど、高校生の学びには多様な選択肢が生まれています。 そんな選択肢を選んだ一人が、山口笑愛(えな)さん。この9月、日本国内の高校卒業後、アメリカ・ミネルバ大学に進学しました。 ミネルバ大学は全寮制でキャンパスを持たず、4年間で7か国(アメリカ、韓国、インド、ドイツ、アルゼンチン、台湾に加え、2025年から日本も追加)に移り住みながらオンライン授業を受ける新しい形式の大学です。企業やNPO、行政、研究機関などと協働するプロジェクト中心の実践的な学びができ、入学できるのは希望者の3パーセントに満たない超難関大学でもあります。2024年現在、約20名の日本人が学んでいます。 なぜ、彼女は新たな学びの選択肢を選ぶのか。山口さんの人生をたどると、自分らしい進路や将来について考えるヒントが浮かび上がってきました。
両親の言葉はいつも、「がんばりなさい」ではなく「楽しんで」
「友達からは、自由だねとか、人と違うこと考えているよねとよく言われるのですが、それは両親の影響が大きいと思います。安全面のことは気にしてくれたけど、基本的には自由にさせてくれたから。何をするにも、『がんばりなさい』ではなく『楽しんで』と声をかけてくれました」 裏表のない素直で真摯な言葉で語る山口さん。超難関といわれる大学で学ぶことについても気負いのようなものは感じられず、柔らかい笑顔が印象的な18歳です。 幼いころから水泳、ピアノ、習字、新体操、英会話など、多くの習いごとをしてきましたが、やめたいと思うことはなく、どれも長く続けてきたそう。 「公立小学校に通う普通の小学生でしたが、ひとりっ子だったので、両親が『いろんな友達ができるきっかけに』と、習いごとをたくさんさせてくれました。そこで仲良くなった友達と過ごす時間はとても貴重でした」 小学校5年生から約3年間、父親の転勤の都合でアメリカのサンノゼへ。現地校に通い、中学2年生で日本の学校に戻ってきました。それぞれの学校に慣れるまでに長い時間がかかりましたが、そこで得たものも大きかったと言います。 「サンノゼにはいろんな国籍の人がいますが、みんなとても寛容で、自分と違う意見や価値観を持っていても否定しない。『そういう考え方もあるよね』といったん受け入れて、『でも私はこう思うよ』って返すのが普通でした。 日本の学校だと、同じ価値観を持っていることが前提で、意見が違うと『それ違くない?』と友達にも言われます。ただ、自分のコミュニティーがあることや、言いたいことを察してもらえるのは安心感につながるので、アメリカ、日本それぞれの良さがあると思っています」