七尾市のシェフが支えた避難所の調理…直面した「避難所の課題」と北陸再建のために望むこと
金沢、富山そして能登もいつか旅してほしい
被災してから1カ月がたち、これからは第2フェーズに入る過渡期だと平田氏は話す。 「避難所にいた方々も金沢などに移ってだいぶ人数も少なくなってきました。断水が復旧したら、自分の店を再開しようと考えています。市役所の人といまはやりとりしていて、どこかのタイミングで避難所での食事の管理などを引き継ぎしなければならないと思っています。断水復旧にはまだ1カ月半以上はかかると思いますが…」と続けた。 1月末現在は、地元のスーパーも営業を再開してきたので避難所での炊事の回数を減らし、外部の炊き出し支援なども受けつつ、空いたところで炊き出しをしているのだという。 「能登はどこも立ち上がれる状態ではありません。けれど、再開できそうなお店はどんどん再開すべきだと思っています。水道が復旧したら、しばらくはいままでのようなコース料理だけではなく、アラカルトも食べられる店としての営業を考えています。残念ながら中島町では飲食店が少なくなっていますし、地元の人たちや災害支援に来ていただいた方たちが食事をしたり、一息つける場所がありませんので。お店の客席だけでは限りがあるので、 店の前のスペースには、仲間のシェフや農家さん、漁師さんなどが集まって、マルシェ的なものをやりたい。遠方から来た方にも地元の人にも楽しんでもらえるような場所になれたら」と展望を話す。 いま、金沢や富山など北陸地方は自粛ムードで観光客が一気に減ったことも問題になっている。“何かしたい”と思っている人はまず、北陸に旅をし、能登へのエールを送ってみるのはいかがだろう。 「何かをしたい、と思ってくれる気持ちは嬉しいです。この震災はいまだけのことではありません。これから復興までは必ず長い時間がかかります。その間も忘れないで、時間があれば能登を訪ねていただけたら嬉しいです。また、日頃から地震についての備えは非常に大切です。ぜひ忘れずにしてください」(平田氏) 「北陸チャリティレストラン」 2016年の熊本地震発生時より食の支援活動を続けている食の専門家による団体。能登半島地震の復興支援でも活動を続けています。活動報告や義援金によるサポートの詳細はFacebook、Instagramをご覧ください。 取材・文=山路美佐 写真提供=平田明珠(ヴィラ・デラ・パーチェ) 編集=内田理惠(婦人画報編集部)