七尾市のシェフが支えた避難所の調理…直面した「避難所の課題」と北陸再建のために望むこと
"本当に必要なもの"をどう伝えるか
4日、手始めに家庭科室に集まっている物の整理をした。掃除をし、衛生環境を整え、洗い場の動線も確保。冷凍冷蔵庫がなかったので、食材は自分の店にストックし、往復して取り出しながら300食ほどの炊き出しをした。 この頃には支援物資なども届き、近隣の農家さんたちから野菜が届けられ、食材は豊富に揃うようになっていたが、中で整理するうちに、さまざまな問題に直面する。 まず、生活用水の圧倒的な不足。断水というと、飲み水が足りないのではとイメージしがちだが、実際には器などを洗う生活用水がまったく足りず、衛生面の対策が必要に。逆に支援物資で届いた水のペットボトルが消費しきれずに溢れていた。また、集まる食材のストック場所も問題になった。冷凍冷蔵が必要なものが届くが、それを保管しておく場所がない。こうした現場の状況を無視して、とにかく大量の支援物資という名の箱が毎日届く。 「箱をすぐに開けられないので、すべて賞味期限切れになっていたり腐ったりして捨てなければならないものもありました。もちろん、ゴミの収集などもないので、この面でも衛生面で不安でしたね」
4日目から、調理は飲食店経験のある地元の方や金沢から応援にかけつけてくれたシェフたちにまかせ、自分は避難所の人数把握から食材の在庫を確認して献立を決定することなどに集中する。 調理する人員が確保できたので、定食のような栄養バランスのあるものを考えた。アレルギーの原因になりそうなものをなるべく使わず、薄味に。野菜が特に取れない状況が続いているので野菜を多くする工夫もした。
また、平田氏が活用したものにSNSがあった。いま、必要なものと必要でないことを詳細にSNSで発信。SNSで「いまは、食材はたくさんあります。保存しておく冷蔵庫・冷凍庫が必要です」という発信したところ、いち早くChefs for the blue(サステナブルな水産資源のために活動するプロジェクト)の佐々木ひろこさんが反応。1月11日には、厨房機器レンタルの事業者さんが冷凍冷蔵庫を運び入れてくれ 、白山に住む猟師の方から、肉入りの冷凍庫が届いた。 この日の平田氏のFacebookの投稿には「安心して避難所のみなさんに食事を届けられる体制が整いました。中島小学校が落ち着いてからも奥能登へ届ける食事を保存する中継地点としても機能させていきたいと思っています」と記されている。