タップ拒否に「侍魂。本当の男」称賛声も…なぜ朝倉未来はRIZINで柔術“鬼神”の三角絞めに失神敗戦し引退を口にしたのか?
結果的に世界有数の柔術の使い手にダメージを回復させる時間をプレゼントすることになった。朝倉は、投げを打たれたが、次の1手を許さず、2度目の三角絞めを狙われたが、それも回避した。遠くから左のボディフックを叩き込み、ラスト10秒は、壮絶な殴り合い。クレベルは両手で「こいよ!」のジェスチャー。1ラウンドは、ほぼ互角の展開で白熱した。 だが、インターバルで完全に蘇生したクレベルは、2ラウンドに入ると凄みを見せる。コーナーに朝倉を押しつけると、死角から右のパンチを浴びせ、右ヒジをまるで顔面を潰すかのように超至近距離から何発もめりこませた。みるみる朝倉の右目の上がたんこぶのように変形し、腫れあがった。 「テイクダウンディフェンスをしなくちゃいけないので、あの打撃(ヒジ攻撃)を許してしまった。それもクレベルの強さだった。組み力はあまりなかったが、うまかった。組み力が、そんなにないから安心してしまう。打撃に対しての目がよくて気持ちも強い。勝っている意味を理解した」 ポーランドで5万人を超える観衆の前で、KSWフェザー級タイトルを獲得。鬼神、最強グラップラーと評されたクレベルの超絶テクニックにからめとられた。コーナーに押し付けられてのヒジ攻撃から、そのまま寝技に引き込まれた。「練習を重ねオートマチックにできる」とクレベルが豪語する三角絞めへつなげる見事な必勝レシピだった。 会見を拒否することなく、インタビュールームに現れた朝倉は、淡々と衝撃的な発言をした。 「悔しいがやってよかった。歴史的な東京ドームでの大会でメインを張れたのは自分の宝になる。結果的に(クレベルは)強かった。今後については一度、考える。引退も含めて、ちょっと考えてみる」 自ら引退というフレーズを口に出したのである。 昨年11月のRIZINフェザー級王座決定戦で斎藤裕(33、パラエストラ小岩)に微妙な判定で破れた後には、すぐにリベンジを口にした男が、今、引退に気持ちが揺れる。 その理由をこう続けた。 「格闘技を始めて結構な月日…10年が経った。アウトサイダーから始めて(東京ドームという)大舞台に立てたが…ここで負けたときに格闘技を今後やっていく意味があるのかどうかが、自分の中にある。自分の幻想が打ち砕かれたというか。ここまでだったんだなと自分自身に落胆している。トップを目指せないならやる意味がない。まだ日本の格闘技を盛り上げる役目があるとしたら続けるかもしれないが、それは周りの声を聞いて判断しようかなと」 クレベルとの実力差を肌で知り限界を悟ったのだ。