「原子は最小単位じゃない」ってみんな知っているのに…学校で「素粒子」を教わらない「意外な理由」
学校で素粒子を教わらない理由は…
原子をどんどん細かくしていくと、最後にはアップクォーク、ダウンクォーク、電子になります。この3つは今のところこれ以上細かくならないので、このような粒のことを「素粒子」と呼びます。原子は素粒子でできているので、私たちの体や身の回りにあるものは全部、素粒子でできていることになります。中学校の理科では、「すべてのものは原子でできている」ということは習いますが、「素粒子でできている」ということまでは習いません。そのため、素粒子と聞いても、ピンと来る人があまりいないのでしょう。原子と素粒子はまったく違うものだと思っている人もいるくらいです。 人類は、この宇宙のすべてのものはアトムからつくられていると想像して、実際に20世紀の初めに原子を探し当てたわけですが、世界にはそれよりも小さくて根本的な粒があったのです。原子という名前はすでに使っているので、「素粒子(elementary particle)」と別の名前にして混乱を回避しました。図「原子や原子核の内部構造とその大きさ」右にあるように素粒子クォークの大きさは10-18mより小さいとしかわかっていません。同じように原子核の周りを回っている電子の大きさも10-18mより小さいとしかわかっていません。 もう一度整理しておくと、原子は3種類の素粒子からできていて、その原子が集まっていろいろなものがつくられています。素粒子は身の回りのものをつくる一番基本となる粒です。ちなみに、素粒子の「素」というのは、「これ以上分割することができない」という意味の漢字です。デモクリトスのアトムの意味とよく似ていますね。 「すべてのものが素粒子でできているのだったら、学校でもそう教えればいいのに」と思う人もいるかもしれません。でも、素粒子については、まだまだわかっていないことがたくさんあります。素粒子の種類については、1960~1970年代に理論的には予測されていましたが、本当にあると確認できたのは、つい最近のことです。 例えば、2008年にノーベル物理学賞を受賞した小林誠博士と益川敏英博士は、1973年にクォークが6種類あると予測したのですが、実際に6種類が見つかったのは1995年でした。また、2012年7月に発見が伝えられたヒッグス粒子の存在は、1964年にイギリスのピーター・ヒッグス博士やベルギーのフランソワ・アングレール博士らによって予想されていました。発展中の内容なので、学校ではまだ教えられないということなのでしょう。 * * * さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする。
高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所