サブリナ・カーペンターが語る、2024年を代表する曲「Espresso」制作秘話とさらなる決意
「Espresso」の特大ヒットで2024年上半期の顔となったサブリナ・カーペンター(Sabrina Carpenter)。米ペンシルベニア州出身のシンガーソングライターが、8月23日リリース予定のニューアルバム『Short n’ Sweet』と深くて誠実な歌詞の世界、テイラー・スウィフトと過ごしたかけがえのない時間について語った。 【画像を見る】サブリナ・カーペンター撮り下ろし 暖かい日差しが降り注ぐ2023年7月某日。サブリナ・カーペンターはパリの南にある小さな町で目を覚まし、地元のカフェに向かった。そば粉で作るガレットやクレープを専門に扱うこのカフェ――フランスでいうところのクレープリー――は、この町唯一の飲食店だった。ツアーでヨーロッパを訪れていたカーペンターは、公演を数本こなしたあと、フランス旅行を楽しみながらしばしの休息を楽しんでいた。クレープリーを訪れると、ヨーロッパのカフェらしく、エスプレッソが飲めることに気づく。その瞬間、今年のサマーソングとして人気を博すことになる新曲のアイデアがひらめいた。「Espresso」というタイトルで2024年4月にリリースされたこの曲は、“That’s that me espresso(私がそうさせちゃうの、まるでエスプレッソ)”という歌詞を軸に構成されたサビはじめ、キュートで生意気な歌詞がそこかしこに散りばめられた、バカバカしいと思えるくらいキャッチーで陽気なポップソングである。フランスでこの曲を思いついて以来、頭の中からずっと離れなかったとカーペンターは言う。この曲を聴いた人は、誰もが同じような経験をしているのではないだろうか。これについてカーペンターは、「頭から離れないから、他の人たちに押し付けちゃおうと思ったの」と、いたずらっぽい笑みを浮かべながら言った。 ポップカルチャーが社会現象を巻き起こすとき、それに触発されてネット上では無数のミームが生まれる。「Espresso」も例外ではない。カーペンター本人も、こうしたミームはすべて見ているようだ。時と場所は変わり、私たちはいま、ニューヨークのウエストビレッジにあるカフェの隅っこの席に座っている。5月の暖かな日で、ブルーのデニムパンツを履いたカーペンターは、黒縁メガネをかけて、イニシャルが彫られたホワイトゴールドとダイヤモンドのリングを身につけている。「Espresso」の“ミーム化”には、注目すべき点がある。ネットの世界では通常、ミームはあざけりや皮肉といったものから生まれるのだが、「Espresso」の場合はそうではなかったからだ。「Espresso」に触発されたミームはすべて、この曲の中毒性の高さやキャッチーさをネタにしていた。SNSに投稿されたふたつのミームをカーペンターに見せると、どちらもすでにチェック済みのようだった。そのうちのひとつは、この曲の中毒性になぞらえて、飲食店で”the me espresso“を注文することの危険性を謳っていた(「そんなふうに言われると、まるで毒みたい」とカーペンターはコメント)。もうひとつには、コーヒーが陳列されたスーパーの棚の画像に「すみません、the me espressoはどこですか?」というコメントが重ねられていた(カーペンターはこの投稿を自身のSNSでリポストしている)。 「Espresso」は全世界でスマッシュヒットを記録し、それによってカーペンターは新次元のスターダムを手に入れた。それにもかかわらず、25歳のシンガーソングライターはこうした事態を冷静沈着に見ている。「ママには『どう? びっくりして舞い上がってるんじゃない?』って聞かれた」とカーペンターは言い、「それよりも、みんなが私のユーモアを理解してくれたことがすごく嬉しい」と続けた。 カーペンターが芸能活動をはじめてから10年以上が経つ。ブレイクのきっかけは、2014年にディズニー・チャンネルの人気ドラマで主人公の親友役を演じたことだった。2015年にはシンガーとしてデビューを果たし、太陽のように明るい楽曲を次々とリリース。抜群の歌唱力と、自身の恋愛やスターダムの浮き沈みを驚くほど誠実に語った歌詞によって、大勢のオーディエンスを獲得した。 カーペンターのコラボレーターである音楽プロデューサーのジャック・アントノフは、「サブリナ・カーペンターという存在の目撃者として、さらには共にレコーディングを行う者として言いますが、彼女が卓越したシンガーであることは明白です。あれほど素晴らしい歌声を耳にすると、その魅力を余すところなく捉えたいという強い思いに駆られます」と彼女を絶賛している。 「Espresso」は、カーペンターと彼女の長年の友人であるソングライターのステフ・ジョーンズ、そしてここ最近になってコラボレーションをはじめた、ソングライターのエイミー・アレンとの合作である。プロデューサーを務めたのは、ジュリアン・ブネッタ。ブネッタとは、2022年のヒット曲「Nonsense」以来の再タッグとなった。「Espresso」を手がけるにあたってカーペンターらは、“Move it up, down, left, right, oh / Switch it up like Nintendo(上げたり下げたり振り回してみたり / ニンテンドーで遊ぶみたいに)”のように、日常生活で使いたくなるような歌詞や、“I’m working late ’cause I’m a sing-errr(帰りは遅くなるよ / だって歌手だもん)”のように、ネット上でバズりにバズった歌詞を考案した。気心の知れた仲間たちと仕事をすることについてカーペンターは「バカバカしさと笑いと紙一重のこうした歌詞は、彼らと一緒じゃないと生まれない」とコメントし、「音楽づくりを心から楽しめるメンバーだけを集めた」と言葉を添えた。