サブリナ・カーペンターが語る、2024年を代表する曲「Espresso」制作秘話とさらなる決意
サブリナは一日にして成らず
5月の取材の数日前、Spotifyのランキング「Top 50 USA」のトップ5はたったふたりのアーティストに占められていた。そのふたりとは、カーペンターと彼女が愛してやまないテイラー・スウィフトである(スウィフトの4曲とカーペンターの1曲がランクイン)。カーペンターは昨年、スウィフトのツアーに参加し、メキシコシティと南米、オーストラリア、シンガポールの4公演においてオープニングアクトを務めた。憧れの存在であるスウィフトについてカーペンターは「彼女は、私にとってまったく異次元の存在。自分の人生やキャリア、これまで歩んだ道のりは、彼女が成し遂げたことには遠く及ばない」と語った。 オープニングアクトを務めた者の特権として、カーペンターはスウィフトが『THE TORTURED POETS DEPARTMENT』の収録曲(その後、これらの曲は「Espresso」のライバルとなり、ランキング上でバトルを繰り広げるのだが)を歌い上げる姿を特等席から満喫した。お気に入りの曲を尋ねると、カーペンターの目が輝いた(お気に入りは「Guilty as Sin?」)。「テイラーは、自分がその曲を必要としていることに気づかないときに、いつもぴったりの曲を届けてくれる」と言い、さらに続けた。「私たちは互いを愛し、尊敬していることを声を大にして言い合っている。[……]リリースする前に聴かせてもらった『But Daddy I Love Him』は、大好きな曲のひとつ」。スウィフトとカーペンターは、いまではすっかり仲良しだ。昨年の10月にはカンザスシティ・チーフスの試合を一緒に観戦し、その後はメットライフ・スタジアムのスイートルームでパーティを繰り広げた(「ウォッカ・クランベリーを一杯飲んでからは、アメフトのことは全然覚えていない」とカーペンターは明かした)。 4月には、キム・カーダシアンがプロデュースする下着ブランド「SKIMS(スキムス)」の広告キャンペーンに起用された。カーダシアンといえばスウィフトの“宿敵”だが、スウィフトは広告キャンペーンがネット上で大成功を収めたことに心を痛めてもいないし、友人である自分が起用されたことを批判するネット投稿も気に留めていない、とカーペンターは言った。「世間がどんなにささいなことも批判したいなら、そうすればいい。私は忙しいから、そんなことはどうでもいいの。キムと一緒に仕事をしたことは、ちゃんとテイラーに伝えている。私はテイラーが大好きだし、死ぬまで彼女を応援するつもり」とカーペンターは言い、「だから、私としてはなんの気まずさも感じていない。でも、世間はいろんなことを言うんだよね。他にやることがないから」と言い放った。 このところは、何事も成り行きに任せているという。先述のMETガラではオスカー・デ・ラ・レンタがデザインしたゴージャスなビスチェドレスで登場し、米バラエティ番組『サタデー・ナイト・ライブ』では「Espresso」と「Nonsense」と「Feather」のメドレーを披露した。さらには、番組内でアニメ『スクービー・ドゥー』にちなんだコントでダフネ役を演じた。ベルベットのベッドフレームを買ったことに心を踊らせるいっぽうで、スケッチをするのも大好きだ。コーガンや友人たちと一緒にディズニーワールドに遊びに行くこともある。そのいっぽうで、ニューヨークとロサンゼルスを行き来しながら、ニューアルバムのプロモーションと予定されているツアーの準備をこなし、忙しいスケジュールの合間のオフを楽しんでいる。大のクラブ好きというわけではないが、雰囲気のいいレストランでの外食も好きだという(友人が経営するニューヨークのウエストビレッジの「パルマ」がお気に入り)。私たちは、シングルが1位を獲得した売れっ子アーティストの特権は、人気レストランの予約が取りやすくなることかもしれない、と冗談を言い合った。 いつか音楽で成功できる日が来るのだろうか、と不安に思ったことはないのか? と尋ねると、カーペンターは笑いながらこう言った。「私って、本当にウザい奴なんだよね。売れなかったらこうしよう、なんて計画はそもそもなかったし、アーティストとしてやっていけないなんて考えたこともなかった。いつかはかならず成功できると信じていた。問題は、それが“いつ”訪れるか」。 そしていま、カーペンターは音楽の道で生きることにさらなる野心と決意を抱いている(それはコーチェラで「Nonsense」を披露した際に放った「今度はヘッドライナーで戻ってくるから」というメッセージにも反映されている)。「長い時間を経て、ようやくアーティストとして成功できたことに心から感謝している。じっくり考えながらやってきたことだから、一夜にして成功を手に入れたっていう感じはまったくしないんだよね。だから、リラックスしながらもワクワクしてる」と言うと、こちらを見てニッと微笑んだ。 「要は、サブリナは一日にして成らずってこと」。 --- サブリナ・カーペンター ニュー・アルバム『Short n’ Sweet』 2024年8月23日(金)リリース
Waiss Aramesh