実は「日本は木工大国」林業復活に必要な“家具輸出”、業界をあげての課題とは
日本林業の活性化策の一つとして、木材輸出が推されている。国内は人口減少もあって木材需要の伸びが期待できないため、海外に輸出することで補おうというのだ。 【図表】林産輸出額の推移 政府も近年は農林水産物の輸出に力を入れてきた。2023年実績では、輸出額が過去最高の1兆4547億円となり、前年比で2.9%増。ただ内訳は農産物が9064億円と圧倒的で、林産物は621億円にすぎない。農産物にしても、金額が大きいのはアルコール飲料や調味料類なので、明快に輸出が日本の農業に寄与しているとは言い難いのだが……。 林産物輸出も4割近くが丸太で、しかも使い道は土木資材や梱包材といった安価な用途が多い。また合板の輸出先は主にフィリピンで、現地で住宅資材用に加工してから日本に再び送り返しており、利益が十分に山元に還元される構造にない。このように輸出の中身を分析すると残念な結果になってしまう。 その中で目立つのが木製家具だ。23年は73.4億円と林産物輸出額の約12%を占める。 日本の林産物輸出額統計のグラフを見ていただきたい。20年に木製家具が突然40億円カウントされて以降は右肩上がりに急成長している。19年以前は林産物に木製家具を含めていないため統計に出なかった。ただ10年の家具輸出額は15億円程度だったから、13年間で約4.9倍に増えたのは間違いない。
洋風の高級家具になり得る日本の木工技術
日本の家具輸出は、あまり意識されていないだろう。むしろ輸入するイメージが強いのではないか。事実、身近な家具では中国製やベトナム製がよく目につく。一方で高級家具と言えばアンティークなども含めてヨーロッパ製が圧倒的だろう。 日本に高級家具をつくる伝統はあるのかと疑問を持つかもしれない。ところが木工研究者に聞くと、「日本は木工王国」なのだそうだ。減少傾向とはいえ、全国に多数の木工家がいる。またアマチュアを含めて木工ファンが多いことも世界的に群を抜いているそうだ。実際に木工イベントには希望者が殺到する。もともと宮大工の木組みや建具に施された緻密な細工など木工技術は高く、それを洋風家具の製造にも活かせるというのだ。 たとえば伝統的な組子を使った家具やインテリアは、世界的に人気を呼んでいる。とくにJR九州の特急「ななつ星」の車内インテリアが人々の目に止まり称賛を得た。 問題は、日本の家具が品質的に優れていても、欧米の高級家具のようなブランド力がないこと。デザインも認められてこなかった。 そのため欧米の最上級ブランドの価格帯と比べると、ワンランク下の扱いだった。また国内の家具需要も安きに流れ、高級家具の売行きは芳しくなかった。