実は「日本は木工大国」林業復活に必要な“家具輸出”、業界をあげての課題とは
市場は家具だけではない
一方で家具にこだわらない木工品に目を向ける動きもある。 家具木工メーカーとして有名なオークヴィレッジの人と雑木林を歩いたことがあるが、太い広葉樹を見かけると「このヤマザクラは、2メートルの丸太が5本は取れる」「このクリなら、真ん中で割って挽いて広げたらテーブルの天板にもってこい」「コナラは乾燥が難しいけど、硬い心材部分を使うと椅子の脚にできる」「このハリギリだったら器を200個ぐらい挽ける」……と次々と計算されていた。平均すると1本の雑木から10万~20万円ぐらいの純益の得られる木工品が生産できるという。 実際、木の食器やカトラリーは人気を呼んでいる。それどころか100万円する木製キャットタワーとか、20万円の木製イヤホンや木製高級スピーカー……など、木製ゆえに高級とされる分野が広がっている。
これまでの林業は、柱や板など建築材を供給しているイメージが強かった。また昨今は、合板やバイオマス燃料といった安価な用途ばかりが膨らんでいる。だから木材生産量や木材自給率が高まったと喧伝されても、山主への利益還元は縮小の一途で、むしろ山側の疲弊が目立つ。それが林業経営の意欲を減退させ、森林の放置を進めてしまった。
全世界での輸出入は年間約4兆円
めざすべきは量よりも質と利益率の高い商品だろう。それに向くのは、建築構造材よりも家具などの木工品ではないか。潜在的な需要も大きい。 全世界で輸出入される木製家具は、年間約4兆円に達する。また木工用木材は建築材と違って短くても使えるうえ、放置された雑木林の中にも大径木が眠っている。それだけに高級な木工製品の生産と輸出は、一筋の光明になり得るだろう。 もちろん、広葉樹材の安定供給や乾燥技術の確立、職人の技術とデザイン力を高める努力も必要だ。また販売ルートの開拓など厳しい条件も多い。これらの課題は、個人や民間会社だけに任せず業界上げて取り組むべきだ。 日本の林業の復活を願うのなら、優秀な木工職人とともに日本の木工品の魅力を世界に発信してはどうだろうか。
田中淳夫