実は「日本は木工大国」林業復活に必要な“家具輸出”、業界をあげての課題とは
海外に進出する日本メーカー
だが、このところ日本の家具の海外輸出に取り組む家具会社や工房が次々と現れた。 先陣を切るのは、広島県のマルニ木工が手がける「HIROSHIMA」シリーズだろう。約30カ国に輸出して日本を代表する家具となった。シンガポールのラッフルズホテルやアップル本社にも椅子が採用されて知られるようになった。この会社が高級家具の輸出に挑戦し始めたのは2000年代に入ってからだが、現在は海外販路を開拓するためのブランディング会社まで立ち上げている。 また佐賀県のレグナテックと平田椅子製作所も両社で家具ブランド「ARIAKE」を発表して海外輸出に力を入れている。ヨーロッパ、北米、豪州などで広く販売されている。すでに日本よりも海外で多く流通しているという。
そして22年には熊本県のForequeの「FIL」が、世界三大工業デザイン賞の一つであるiFデザインアワードを受賞した。空間デザイナーの木下陽介氏が手がけ、家具というより居住空間の一部としての椅子とテーブルをデザインしたという。 海外に活路を求めた家具メーカーがいずれも重視したのはデザインである。その努力の甲斐あって、欧米の有名家具メーカーに見劣りしなくなった。実際に海外のデザイン・コンペに出展し受賞することも増えている。
木材供給の問題
とはいえ、家具に消費される木材の量はわずか。しかも日本製と言っても、肝心の素材が国産材とは限らない。家具によく使われるのは広葉樹材だが、日本の広葉樹材は供給環境が整っていない。そのため外材に頼りがちだ。 しかし、近年は海外でも広葉樹材資源は枯渇しつつある。とくにウォールナットやチークなど家具に向いた樹種は伐採禁止や輸出禁止の動きが広がってきた。 これからは国産広葉樹材の供給に力を入れるとともに、スギやヒノキなど日本に大量にある針葉樹材による家具生産も課題となるだろう。 先に紹介した「FIL」シリーズは地元(南小国町)の小国杉にこだわって家具づくりを行っている。また北海道の中川町は、町内の広大な天然林から計画的に広葉樹を伐りだして近隣の旭川市の家具メーカー数社に提供している。宮崎県の諸塚村は、家具の企画会社ワイスワイスと提携して、シイタケ原木の中で太くなりすぎた木を利用して家具をつくる試みを進めている。ほかにも従来は木工に向かないと雑木扱いされたコナラやクヌギ材を使った家具づくりに挑戦している工房も増えてきた。