なぜ東京五輪を見据えなかったのか? 世界陸上男子マラソン選考の是非
3月17日に行われたロンドン世界選手権のマラソン日本代表選手発表会見。予定時刻になっても登壇者は現れなかった。選考がもめているのか? と勝手に“期待”していたが、5分ほどオーバーして始まった会見はスムーズに進行していった。 すでに報道されている通り、マラソン日本代表にサプライズは一切なかった。男女3名は至極真っ当な人選で、ガッカリしたのは筆者だけではないだろう。 最初にマイクを握った尾縣貢専務理事は、「ロンドン世界選手権はリオ五輪が終わって最初の国際競技会です。東京五輪に向けてのスタートライン。今回は戦えるメンバーであると確信しています。それぞれが個性を持ち合わせており、それをロンドンのコースで発揮してくれると我々は期待しています」と挨拶した。 スズキ浜松ACに所属する安藤友香と清田真央の23歳コンビが入った女子はいい。「東京五輪に向けてのスタート」と言うわりには、男子の顔ぶれは3年後につながるようなイメージを持つことができなかった。選出されたのは井上大仁(MHPS)、川内優輝(埼玉県庁)、中本健太郎(安川電機)の3名で、補欠に山本浩之(コニカミノルタ)が入った。24歳の井上はともかく、川内は30歳、中本は34歳だ。 4つの選考会(男子は福岡国際、別府大分、東京、びわ湖)から3人を選ぶため、瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは、「42.195kmをしっかり走ることがマラソンです。レース全体をいかにコントロールできたかという観点から選考しました」と選出基準を説明。それから各選手をこう評価した。 「井上選手は選考競技会のなかで最も速い記録(2時間8分22秒)。東京でのレース展開も評価いたしました。川内選手は福岡国際(2時間9分11秒)において、ペースメーカーが抜けた後に、経験を生かして、自分で仕掛けてマラソンを作り上げました。日本人トップになったことも評価しております。3番目の中本選手は別府大分で優勝するためのレースとして主導権を握り、2時間9分台(32秒)で勝ったことを評価しました。 山本選手(東京で2時間9分12秒)と比較して、マラソンの完成度は上だと判断いたしました」 瀬古リーダーに続いて、河野匡マラソンディレクターが、「男子は中本君のマラソンの流れと山本君の記録的なものとの比較になりましたが、優勝することの価値、42.195kmをしっかり走ることの意味を評価して、中本君を選ばせていただきました」と補足した。 選考要綱によると、編成方針は「本大会でメダル獲得を含めた複数入賞を目指す選手団編成とする」と記してある。3年後に東京五輪を迎えるなか、今回の選考でこの3人を選んで良かったのだろうか。