なぜ東京五輪を見据えなかったのか? 世界陸上男子マラソン選考の是非
2020年東京五輪が決定したのは、今から3年半前(2013年9月)。昨年11月2日に、東京五輪に向けた強化委員会の新体制で、瀬古利彦DeNA総監督が強化戦略プロジェクトリーダーに任命された。瀬古リーダーに何か「戦略」があったうえでの就任なら良かったが、「これから考える」というスタンスだった。すでにロンドン世界選手権の日本代表選考要綱は発表されており、新たな改革といえるのは、大阪国際女子で、「ネガティブスプリット」のレースを導入したことぐらい。男子に関しては、「喝です!」と言うだけだった。 2020年の東京五輪は日本マラソン界にとって特別な大会なのだろうか。単なる世界大会のひとつという位置づけなら、このままでもいいのかもしれない。しかし、東京五輪で「メダル」を狙うのなら、もっと早い段階で瀬古リーダーを任命するなど、先を見据えた具体的なアクションが必要だったように思う。現状を考えると、期待感の出てきた女子はともかく、男子は「メダル」ではなく「入賞」に目標を切り替えるべきではないだろうか。「メダル」と「入賞」ではレースの組み立て方が違ってくるからだ。 一斉スタートのマラソンは参加者が増えても運営に支障が少ないこともあり、世界大会の参加標準記録がゆるい(男子は2時間19分00秒)。他種目の選手・指導者からは「戦えない選手を連れていくべきではない」という意見も聞かれる。今回は最大3枠を使ったが、さほど強くないマラソンを特別扱いするわけにはいかないだろう。 東京五輪は2020年夏に開催されるが、その選考レースまではあと2年半ちょっとしかない。それまでにどれだけタイムを短縮できるのか。そして、どんな目標を持って挑むのか。残された時間で結果を出すには、もっと大胆に改革していくしかない。瀬古リーダーにはそれを推し進めていくキャプテンシーを発揮していただきたいと思う。 (文責・酒井政人/スポーツライター)