新国立競技場をデザイン 建築家の隈研吾氏が会見(全文1)
2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の建設計画で、デザイン案が採用された建築家の隈研吾氏が15日東京の外国特派員協会で会見をした。 新国立競技場をデザインした隈研吾氏「ザハ氏案とはコンセプトが違う」 新国立競技場のデザインをめぐっては、当初キールアーチを活用するザハ氏案が採用されたがコスト増などを理由に見直され、昨年末に隈氏と大成建設・梓設計の案が採用されることが決まった。隈氏らの案は木材を多用したデザインで「木と緑のスタジアム」をコンセプトにしている。
自然の素材、木を感じられるような優しいスタジアムに
隈:まず、われわれチームは3つの会社です。大成建設とあずさ設計とわれわれの事務所3つのチームです。これはみなさん、もうよく見ておられるパースです。建物の外観、この外苑の森、われわれは「森のスタジアム」というふうにこの案を名付けました。外苑の森というのは東京でも非常に大事な緑のスペースなので、それとどうやって調和させるかということを第一に考えました。 じつは私の事務所は、このスタジアムのすぐそばにあります。それで私の家は神楽坂にあるので、毎日このスタジアムの脇を通って、家にじつは通っているのですね。で、この場所の緑がどうなるかということに関しては私も非常に関心がありました。 われわれが考えたのは、建物をなるべく低く抑えたいということ。最高の高さ49メーターになっています。それから建物を自然の素材、木をたくさん使って、木が感じられるような優しいスタジアムにしたいということを考えました。 それから、この絵を見ていただくとわかるように、外観にはですね、緑を本物の植物をたくさん植えました。それも東京の在来の植物をたくさん植えて、それによってさらに外苑の森と建物のというのが調和するように考えました。 隈:緑を植えると、たぶん皆さん気になるのはメンテナンスが大変じゃないかっていうことをたぶん気にされるだろうと思うんですが、メンテナンスがなるべくかからないような木を選んで植えました。 これが南側の入り口からスタジアムを見上げたところです。普通、建築っていうのは、建築家はついつい建築を模型で見て、上から見て、格好がいいとか悪いとか言うんですが、私たちの場合は人間の地上のレベルから見たときに、建物がちゃんと人間に優しく感じられるようにするということをテーマに設定しておりますので、この地面のレベルから建物を見上げたときの感じというのが非常に大事です。 この見上げた絵で木が見えると思います。これはひさしの、軒の部分に木をたくさん使っています。これは日本の伝統的建築っていうのも、ひさしの下の軒の部分に木を使って、その部分がすごく美しいのが日本の伝統的な建築の特徴なので、私たちもそういうような日本の技を今回、この建物にも生かしたいと思いました。 例えば、皆さんご存じの奈良の法隆寺があります。この法隆寺の五重塔というのも、そのひさしの裏の軒というものの美しさ、そこに木を使っている、その美しさがこの法隆寺の五重塔の美しさの大事な部分なので、われわれはこういうものを意識して、こういうやり方を現代によみがえらせようというふうに考えたわけです。 それからこの軒に木を使うというののもう1つのいいところは、直接雨がかからないので木が長持ちするっていうことです。それによってこの法隆寺の建物は世界最古の木造建築って言われますですね。それと同じようにわれわれも、木を軒のところに使って雨が直接かからないようにすることで、メンテナンスを簡単にして木を長持ちさせる、メンテナンスコストを安くさせるということを考えました。 これは明治神宮です。明治神宮は、今回の敷地は外苑っていって明治神宮の森の一部であります。その外苑のこれが中心に当たる明治神宮の建物ですが、この建物も実はこの軒のデザイン、軒が重なったデザインというのを、このデザインの一番のポイントにしております。