【スワンS】距離延長組より短縮組が優勢 京成杯AH4着セルバーグに好機到来
中心は3歳か5歳
かつて京都競馬場の内馬場にある池には白鳥が飼育されていた。競馬場のシンボルとなっている池はかつてあった巨椋(おぐら)池の名残りだという説がある。巨椋池は池というより湖に近い大きさを誇り、平安京と平城京を結ぶ地点にあったため、水運に利用されてきた。昭和のはじめ、大雨が降ると溢れ、水害をもたらす巨椋池は干拓され、姿を消した。 【2024菊花賞】注目の予想はここからチェック! 低湿地帯にある京都競馬場には排水ポンプや暗渠(あんきょ)菅が設置され、水はけ対策が施されている。巨椋池の名残りといわれる京都の池に住む白鳥は残念ながら姿を消し、スワンを冠したスタンド名も改装を機に改められた。スワンSは京都競馬場に白鳥がいたことを伝える碑石でもある。データは21、22年阪神もあわせた過去10年分を使用する。 1番人気【3-2-1-4】勝率30.0%、複勝率60.0%、2番人気【4-1-2-3】勝率40.0%、複勝率70.0%と2番人気までは結果を残すものの、これ以下が少々頼りなく、10番人気以下【2-2-2-67】勝率2.7%、複勝率8.2%など伏兵まで好走する可能性を残す。 3歳が【3-0-1-12】勝率18.8%、複勝率25.0%と強力。やはりこの時期になると、1400m前後の経験をきっちり積んできた3歳が勢いと斤量差で上位に入る。ファルコンSを制したダノンマッキンリーはこの夏、北海道のスプリント戦で経験値を積んだ。適距離に戻ればスピードで見劣らない。 古馬勢は5歳【4-5-4-37】勝率8.0%、複勝率26.0%が合格ライン。4歳が【1-2-2-28】勝率3.0%、複勝率15.2%と少々苦戦しているが、5歳に比べ4歳はまだGⅠがある1200mやマイル戦線に挑む馬が多く、1400m専門に割り切れない面もある。1400m巧者が少ないのも成績に関係しているのだろう。
スプリント重賞経由は危険
そういった意味では1400m巧者の4歳スズハロームは4歳だからと軽く扱えない。5歳勢はダノンスコーピオン、マテンロウオリオンら。7歳ウインカーネリアンなど1400mの経験値が高くはない実績馬の名が並び、ちょっと波乱の気配がする。 前走GⅠ【4-4-4-31】勝率9.3%、複勝率27.9%は安田記念が【2-2-2-7】勝率15.4%、複勝率46.2%。9着以内【1-2-2-2】、10着以下【1-0-0-5】なので、二桁着順でなければマークは必要だ。 二桁着順から巻き返したのは2014年ミッキーアイル(前走安田記念11着)のみ。同馬は3歳でNHKマイルCを勝ち、安田記念に転戦していた。ちょっと特殊な例だ。 前走スプリンターズSは【1-1-1-17】勝率5.0%、複勝率15.0%と直近のGⅠのわりにつながらない。10着以下【0-0-0-9】なので、距離が延びて楽になるとはいえ、ダノンスコーピオンは評価しづらい。 前走GⅡ【0-2-1-16】複勝率15.8%、GⅢ【3-1-3-35】勝率7.1%、複勝率16.7%は距離に注目。セントウルS【0-0-0-4】、キーンランドC【0-0-1-5】、北九州記念【0-0-0-6】とスプリント重賞の出走直後は散々な結果だ。 阪神開催のスワンSの前走GⅡ、GⅢ【0-0-0-13】を抜いても【3-3-4-38】。ここから1200mに限っても【0-0-1-13】で、買うなら前走1600m【3-1-1-17】。CBC賞2着スズハロームなどかなりの馬がこのデータに引っかかる。 そうなると前走京成杯AH組【3-0-0-12】勝率、複勝率20.0%が候補にあがる。4着以内【2-0-0-3】、5着以下【1-0-0-9】で、4着セルバーグは合格ラインにある。京成杯AHから斤量増【0-0-0-4】、増減なし【1-0-0-3】、斤量減【2-0-0-5】なので、57kgだったセルバーグは今回増減なしで問題ない。京成杯AHで基礎重量と同斤だったのは、今回につながる。 問題は2、3歳時以来の1400m出走だろう。昨年の中京記念を逃げ切ってから競馬が難しくなった印象があり、マイルでもリズムをとれない現状を考えると、さらに距離を縮め、リズムを取り戻す可能性に賭ける価値はある。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳