不朽の名作『ドラゴンクエストIII』リメイク版が登場、歴史家が考察する「勇者は何年かけて大魔王を討伐したか?」
(歴史家:乃至政彦) ■ ドラゴンクエストIIIの冒険期間 11月14日に発売される『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(以後「ドラクエ3」と短縮して称する)のリメイク作品を楽しみにしている人は多い。私も仕事の合間にちびちびとやらせてもらうつもりでいる。 【写真】1988年2月10日、『ドラゴンクエストIII』が発売され、1日で100万本が完売。東京・池袋のビックカメラにできた長蛇の列。 どれぐらいの期間冒険にのめり込むかは、個人差があると思うが、今回は中世(ドラクエ3の世界は古代だろうが)の旅行者たちの移動時間などを参考に、われわれプレイヤーではなく、ゲーム世界のキャラクターたちの冒険期間を想像してみたい。 テーマは「勇者は何日、もしくは何年かけて大魔王を討伐したか?」である。 ■ 勇者たちの移動時間 早速サンプルとして、ドラクエ3のジパングを見てみよう。そこには卑弥呼のいるジパングの都と、やまたのおろちが隠れている洞窟がある。ジパングの都は位置的に奈良県あたりにあるように見える。そこから関東北部にあるらしい洞窟までは、わずか2歩で移動できる。 ところでこのゲームには時間の概念がある。勇者たちが旅を続けていると、昼から夜に、夜から昼に変わっていくのだ。 それは勇者たちの歩数で変化していく。インターネット情報によると、朝から夜まで140歩、夜から朝まで96歩の移動が必要で、1日は236歩という計算になる。10歩で1時間ぐらいになろうか。 もちろんこれは現実的ではない。この世界のジパング本州は、現在の青森県から山口県まで1400キロメートルほどもあろうところを、わずか8歩で移動できる。 参考までに、16世紀末の豊臣秀吉・秀頼時代に日本を訪れた朝鮮人文官の記録を見てみよう(『看羊録』)。 関東から倭京(京都)に至るには、遠い地は二十日の日程は下らず、近い地でも一五日はついやす 京都から関東まで、2~3週間ほどはかかると言っているのだ。これを勇者たちはたった2歩で移動する(20~30分程度だろう)。 そして、青森県から山口県までは、時速1400キロメートル相当の速度で移動できる。 新幹線や飛行機の、レベルではない。日本から見た地球の回転速度がこの1400キロメートルである。 中世の人間の移動距離は、1日に30キロメートル前後というのに、これはさすがにむちゃくちゃ過ぎないか。 ここでこの問題を強引に解釈する仮説をふたつ立ててみよう。