中戸川流・和とイタリアンの融合を3つの食材で体験する6のレシピ
中戸川流・和とイタリアンの融合を3つの食材で体験する6のレシピ
イタリア料理で腕を磨いてきたシェフでありながら、ジャンルの垣根を超えた新しい食の提案をし続ける。そんな中戸川弾氏が描く日・伊融合のビジョンとは。
食べ手の食欲を揺さぶるユニークな混合戦
2018年のミシュランで4年連続ビブグルマンを獲得した『オトナノイザカヤ中戸川』。イ タリアン出身の中戸川弾氏の作 る本格的で遊び心のあるイタリア料理と、家庭的な和食が一緒に楽しめる異色の店だ。 「肉じゃがを食べているところに、本格的なパスタが来たりすると面白いじゃないですか。隣に『弾』を作ったことで、さらに本格的な和食も楽しめるようになって、お客さんの食欲を揺さぶる振り幅になっています」。 中戸川氏は『中戸川』のすぐ隣に、『キガルニワショク弾』を2016年にオープンさせた。エントランスこそ別々だが、厨房で繋がるこの軒ではそれぞれの店の料理も自由にオーダーできるシステム。中戸川氏は主に『中戸川』で腕を振るい、『弾』では和食の世界で腕を磨いてきた金子太一氏が料理を務める。 「隣同士という環境だからこそ、同じ食材を共有して今回の企画のように同じ煮込み料理でもまったく異なるアプローチをお互い試行錯誤したり、僕は料理をとにかくユニークにしていきたい。和食でもポルチーニの土瓶蒸しや魚とホワイトアスパラの蕪蒸しもとても美味しいんです。金子君にはイタリアンをやってきた自分だからこそ感じるような、アドバイスを伝えるようにしています」。 イタリアンを専門としてきた中戸川氏が家庭料理や和食にこだわるのには、料理人としてのアイデアだけでなく、食べ手としての日々の思いもある。 「実際に和食を食べに行くと、お腹は満たされても、欲求的にどこか物足りなさを感じたりすることありませんか。単純に現代人の食文化や味覚が変わって、洋食で脂を摂る習慣ができたため、淡白なものだけでは満たされなくなってきているんじゃないでしょうか。例えば、安納芋の天ぷらにマスカルポーネとゴルゴンゾーラを軽く混ぜたものを少し乗せたりするとすごく美味しい。そういう料理もあって淡白な料理も美味しく感じるという緩急が、人を飽きさせない。食べ手にとっていつも面白く、新鮮でありたいという意識を、僕は常に持っています」。