神戸イニエスタが新型コロナ感染の同僚DF酒井高徳にエール…6個の絵文字に込められた思いとは?
余計な言葉は必要ない。写真に添えられた6個の絵文字から新型コロナウイルスと戦っている仲間を鼓舞し、万全な状態での復帰を願う熱い思いが伝わってきた。 FCバルセロナとスペイン代表で一時代を築きあげ、2018年夏からJ1のヴィッセル神戸でプレーするスーパースター、MFアンドレス・イニエスタ(35)が3月31日夜に約3364万人のフォロワー数を誇る自身のインスタグラム(andresiniesta8)を更新。前日にJリーガーとして初めて新型コロナウイルス感染が確認された、チームメイトのDF酒井高徳(29)の写真をストーリー機能に投稿した。 神戸市西区の練習拠点、いぶきの森球技場における練習中に撮られたと思われる写真のなかで、酒井はまるで子どものように無邪気で、屈託のない笑顔を浮かべている。イニエスタは写真の上にスペイン語ではなく、酒井のインスタグラムのアカウント(sakai_go1123)とともに「力こぶ」と「ハート」の絵文字をそれぞれ3個ずつ添付。ヴィッセルを変えた功労者の一人へエールを送った形だ。 鹿島アントラーズを2-0で撃破し、クラブ創設以来の悲願だった初タイトルを獲得した元日の天皇杯全日本サッカー選手権大会決勝の直後。新国立競技場から祝勝会と歓喜のビールかけが行われた都内のホテルへ移動したイニエスタは、ヴィッセルでの日々をこんな言葉とともに振り返っている。 「このクラブに来て1年半ぐらいがたち、いい時期もあれば悪い時期もあったなかで、こうした形でタイトルを取れた。クラブがさらに成長していくための、重要な分岐点になると感じている」
神戸を変えたイニエスタと酒井の信頼
スペイン代表を含めて通算で35個ものタイトルを獲得してきた稀代のプレーメイカーにとって、ヴィッセルで味わわされた2018シーズンの5連敗や昨シーズンの7連敗は、経験したことのない「悪い時期」だった。不振で監督が代わるたびにクラブが目指す方向性もぶれ、出口の見えないトンネルでさまよいかけた苦境を変えた一人が、昨夏にハンブルガーSVから加入した元日本代表の酒井だった。 「何でそこで相手へ寄せないのか、何でそこで相手をフリーにさせるのか、という思いを何度も抱きました。特に昨シーズンの前半戦などは、緩さというものが垣間見えたんです」 2018年のオフにもヴィッセルからオファーを受けていた酒井は、届けられた映像を介してヴィッセルの試合を見ているうちに、脳裏に浮かんだ疑問がいつしかもどかしさに変わったと明かしたことがある。 中盤ではイニエスタが眩い輝きを放ち、最前線には昨シーズン限りで引退した元スペイン代表の点取り屋ダビド・ビジャだけでなく、酒井をして「初速があそこまで速い選手は、ヨーロッパでもほとんど見たことがない」と言わしめ、後に日本代表入りした古橋亨梧もいた。 それでも勝てない理由が守備にあるとすぐにわかった。ただ、選手個々の守備力そのものが劣っているわけではない。相手のボールホルダーにプレッシャーをかける意識があまりにも低く、球際で激しくせめぎ合い、場合によっては肉弾戦も厭わない愚直な姿勢もほとんど見られなかった点にあった。 当初は今夏まで契約を残すハンブルガーSVを軸に、ヨーロッパでのプレー続行を優先させる青写真を描いていた。しかし、ヴィッセルとの交渉の過程で、ドイツの地で7年半にわたって培ってきた財産を還元できるかもしれないと考え、新たな挑戦を求めて日本への復帰を決めた。 「外国人選手とかそういうのに関係なく、誰に対してもガツガツと向かっていく僕の姿を見て、みんなが『やらなきゃいけない』と思ってくれたというか。それまでは遠慮していたところが、そうじゃなくなった感じになってきた。練習中におけるプレーの強度やお互いに要求し合う部分が、いい意味での相乗効果となってチーム全体に広がっていった結果として、一人ひとりの意識が変わった感じがするんです。自分自身に対してすごく厳しくなったという点で、ですね」