あまりにも「膨大」過ぎる「太陽」のエネルギーが「地球」にもたらすその圧倒的な「影響力」
---------- 「謎解き・海洋と大気の物理」、「謎解き・津波と波浪の物理」で知られるサイエンスライター保坂直紀氏による『地球規模の気象学』。 風、雲、雨、雪、台風、寒波……。すべての気象現象は大気が動くことで起こる。その原動力は、太陽から降り注ぐ巨大なエネルギーだ。 赤道地域に過剰に供給された太陽エネルギーは大気を暖め、暖められた大気は対流や波動によって高緯度地域にエネルギーを運ぶ。 ハドレー循環やフェレル循環、偏西風が、この巨大な大気の大循環の中心を形作る。大気の大循環を理解すれば、気象学の理解がより深まるはずだ。*本記事は、保坂 直紀『地球規模の気象学』(講談社ブルーバックス)を抜粋、編集したものです。 ---------- 【画像】人体も発している「赤外線」…「地球そのもの」からも「放射」されていた
「熱」は大気を動かす原動力
地球の大気大循環を駆動するエネルギー源は、太陽からやってくる光だ。この光が大地を温め、その熱が大気に伝わる。太陽から受ける光は、北極や南極の近くより赤道のあたりのほうが多いので、低緯度は暑く、高緯度は寒い。だが、その寒暖差は、太陽光の強弱から考えられるほどには大きくない。大気と海洋の流れが、熱を低緯度から高緯度へ運ぶからだ。その過程でできあがった大気の大規模な流れが大気の大循環だ。 この第2章では、太陽から光を受けて地球の大気が動き始める話をしよう。とくに強い光を受ける赤道近くの大気が話の中心になる。第1章で示した大循環の基本形のうち、ここの話で主役になるパーツは「ハドレー循環」だ。 物理の観点でいえば、「熱」の話をすることになる。空気は熱を吸収すると膨張し、軽くなって上昇する。大気は水蒸気を含んでいるので、上昇して温度が下がると雲ができ、そのとき熱を放出する。この過程が重要な現象に積乱雲の発生がある。大循環ではないが、こうした話にも触れることにしよう。 大気の大循環を納得するには、このほかにもいくつか物理に関連する考え方が必要だ。たとえば、気圧、地球の自転など。さらに、現実的には地球の海陸分布も重要だ。これらについては章を改めてお話ししたい。 この章では、まず、太陽から多量のエネルギーが地球にもたらされるところから話を始めたい。エネルギーをもらう一方だと地球はどんどん加熱されてしまうので、地球から宇宙へエネルギーが出ていってバランスがとれているはずだ。入るエネルギーと出るエネルギーとは、なにが違うのか? これは地球温暖化を理解するポイントにもなる。 地表付近で暖まった空気は上昇する。上昇を始めてもやがて止まってしまう空気と、どんどん上昇して巨大な積乱雲をつくるような空気の違いはなにか? 赤道付近の暖かい地帯で上昇した空気は、どこへ行くのか? そういった「熱」と大気のお話を、これからしていこう。