あまりにも「膨大」過ぎる「太陽」のエネルギーが「地球」にもたらすその圧倒的な「影響力」
太陽は赤道付近を強く照らす
地球は太陽から約1億5000万キロメートル離れたところを、ほぼ円軌道を描いて周回している。これが「公転」だ。公転と対になる言葉が「自転」。これは、地球がコマのように自らクルクルと回転していることを指している。地球は、自転しながら太陽の周りを公転しているわけだ。 地球は公転のとき、赤道のあたりを太陽のほうに向けてまわっている。だから、太陽からの光は、赤道のあたりでは真上から、北極や南極の近くでは斜めから照らすことになる。その結果、地球が受ける太陽エネルギーは赤道のあたりで多く、緯度が高くなるにしたがって少なくなる。 もうすこし正確に述べておこう。北極を上とし南極を下とすると、地球は北極を真上に、南極を真下にしているわけではない。23・4度だけ傾いている。斜めになりながら太陽を周回しているのだ。あるときは北半球が、あるときは南半球が太陽の側を向く。これが季節を生む(図2─1)。 日本がある北半球は、春分の日から秋分の日まで太陽の側を向いている。このあいだに太陽からたくさんのエネルギーを受け、暑い夏がやってくる。高緯度では、夜の時間帯になっても太陽が沈まない白夜が訪れる。夏至のころ太陽から地球に届くエネルギーは、北極近くのほうが赤道付近より3割ほど多い。一年を通じて赤道付近にいちばんたくさんの太陽エネルギーが届いているのではない。このころ南極は、昼でも太陽が顔を見せない極夜になっている。 いま説明したのは、じつは、地面に届く太陽エネルギーではなく、はるか上空に届いている太陽のエネルギーについてのお話だ。この「はるか上空」は、しばしば「大気の上端」といわれている。太陽からの光が、地球が衣のようにまとっている大気の層に突入する直前。そこが大気の上端だ。 大気の上端から地球に入った太陽光は、実際には、雲や大気中のちりなどによる反射や散乱を経て地面に届く。その結果、年間を通じてみると、赤道付近で受け取る太陽エネルギーは1平方メートルあたり約300ワット。北極や南極の3倍くらいになっている。大気の大循環を駆動することになる太陽からのエネルギーは、やはり赤道付近に多く届く。 ここですこし注意しておきたいのは、地球の地面に届く太陽のエネルギーは、あんがい少ない点だ。さきほど、地球上の1メートル四方に真上からくる太陽の光で100ワットの電球を13個ともせるとお話しした。だが、これは大気の上端での話。現実には赤道付近でも3個くらいになってしまう。雲で反射されて宇宙空間に戻ってしまったり、大気に吸収されたりするエネルギーは、かなり大きい。 注釈が多くなるが、もうひとつ指摘しておこう。大気を暖めているのは、太陽からの光よりも、むしろ地球表面から上方に放射されている赤外線だ。太陽が地表を温め、地表が大気を暖める。太陽もすこしだけ大気を暖める。これらが合わさって、地表に近い低高度の大気が加熱される。 赤道近くで大気が加熱されて動きだす話をするまえに、そのエネルギーを大気に与えることになる「放射」について、もうすこし詳しくみておこう。なぜ大気は大循環せざるをえないのかがわかってくるはずだ。 さらに連載記事<じつは暑い「赤道直下」ではなく、地球の緯度30度前後に「砂漠が集中」している「意外すぎる理由」>では、地球の気象法則について詳しく解説しています。
保坂 直紀(東京大学大気海洋研究所特任研究員)