組織のミドルエイジが身に付けるべきは「若手を生かすファシリテーション術」 チームプレーを成功させる「間のつかみ方」とは
落語は団体芸。チームプレーで助け合う
同時に、若手には「本番中にモチベーションを下げないでくれ」と伝えています。これは過去に僕が師匠から言われたことでもある。 僕は2019年に、円楽師匠の代打で初めて笑点に出ました。お客さんにとっては、いつもの笑点メンバーへの絶大なる信頼があって観覧に来ているのに、一人だけ知らないやつがいるという状況。 とんでもないアウェーなわけで、「まずウケない。だけど絶対に心折れちゃダメだ」と師匠からは言われていました。 そうしていざ本番が始まったら、うちの師匠がむやみやたらと僕に座布団をくれるっていうボケをして、お客さんと僕の距離をグッと縮めてくれた。 他の師匠方も、僕の緊張をいかに軽くするかを考えてくれたんだと思います。 そうしたチームプレーのおかげで、どうにか乗り切れました。 特にテレビであれば、その場でウケなくても編集でオンエアは面白くなっているはず。「制作の皆さんの腕とオレの腕を信頼して、本番中はテンションを維持してくれ」と、今では僕も若手に伝えていますね。
そもそも落語自体、実は団体芸なんですよ。 寄席では一人ひとりがバトンを渡しながら、トリを目立たせるための環境を作っていく。トリ前の人はウケすぎてもダメだし、人情噺でしんみりした空気にしてもダメ。程よくウケることが求められます。 若手からベテランまで、それぞれが自分の立ち位置を踏まえ、役割を全うする。いわば寄席は「個人でつなぐ団体芸」なんです。 執筆:天野夏海 撮影:大橋友樹 デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio) 編集:奈良岡崇子