イタリア産ミニバンを日本で選ぶ意義は? フィアット「ドブロ」改良モデルに試乗
フィアットのMPV「ドブロ」(Doblo)の改良モデルが発売となった。「フィアット」はイタリアの自動車ブランドで、「MPV」はマルチ・パーパス・ヴィークル(日本で言えばミニバン的なクルマ)の頭文字だ。ミニバン大国の日本で、あえてドブロに乗る意義とは? 改良モデルに試乗して考えた。 【写真】フィアットのロゴが新タイプに! ドブロの顔を真正面から写真で確認
■改良で何が変わった? 改良の主な変更点は内外装だ。 外観では「FIAT」のロゴを刷新。新装備のLEDヘッドライトも相まって、より洗練された顔つきとなった。
車体側面には、単に保護用という以上の素材の質感を備えた「サイドバンパー」を装着。グロスブラックの加飾とボディカラーの対比が目を引くデザイン要素となっている。
室内は黒を基調としているが、チャコールグレーのような明るさも感じる色調だ。そこに銀色のアクセントが織り込まれ、オシャレな雰囲気になっている。ドブロは「商用車ベースの乗用車」という出自を持つが、内装は簡素すぎず、イタリア車らしい色使いの快さが魅力だ。座席は濃紺(ネイビー)の生地に刺繍が織り込まれ、そこにも銀色の横線が彩りを加えている。
機能面ではアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)の使い勝手が向上している。ACC作動中、渋滞などで停止した際には、3秒以内であれば自動で再発進してくれるようになった。車線維持機能の作動時には、右寄りや左寄りなど、運転者の希望に則した位置をキープしてくれる。 もっとも顕著な改良は、これらの運転支援機能を起動させるスイッチがハンドルのスポーク部に移動したこと。これで利便性が上がり、使う頻度も高まるだろう。
■欧州MPV3兄弟でドブロの立ち位置は? 今回試乗したのは、3列シート7人乗りの「ドブロ・マキシ」だ。
フィアットはステランティス傘下のブランドだ。ドブロには、同じグループ内にプジョー「リフター」、シトロエン「ベルランゴ」という兄弟車が存在する。基本は同じMPVだが、外観を含め各ブランドがそれぞれの個性を盛り込んでいる。ドブロは3車種の中でいうと「標準車」(最もシンプルなクルマ)という位置付けであるという。 ドブロの価格が414万円からであるのに対し、ベルランゴは439万円、リフターは448万円からの価格設定となる。値段を見ても、ドブロの標準車的な商品性がうかがえる。したがって、これら3台のMPVの素性を知る上でも、ドブロに試乗する意味は大きい。 標準的な車種とはいいながら、ドブロはイタリアのフィアット製ということもあり、原価重視の廉価車種というよりも、乗用車として所有する喜びをもたらすMPVに仕上がっていると感じた。プジョーとシトロエンのフランスもファッションなどで知られる国柄だが、服飾でもそれぞれに別の魅力を発揮しているように、イタリア車には気持ちを揺さぶる佇まいがある。 ドアを開けて運転席に座ると、座席の色合いなど含め、決して「実用一点張りの廉価な標準車に乗っている」という失望感はない。スポーツカーであろうとセダンであろうと、そしてMPVであろうと、あえて選んだ嬉しさを感じされてくれるのがイタリア車の魅力だ。 座席はフランス車的なゆったりした座り心地のなかに、きちんと体を支えてくれる確かさを感じる。運転を始める前から、移動の疲れを和らげてくれるのではないかという期待感がある。 座席の寸法はやや小さめの印象だが、いざ走り出すと、的確に体を支える十分な機能を備えていることがわかった。試乗中、腰などに違和感を感じることもなかった。クルマの座席として、よく仕上がっている。