イタリア産ミニバンを日本で選ぶ意義は? フィアット「ドブロ」改良モデルに試乗
■ドブロの乗り味は? 直列4気筒のディーセルエンジンは排気量が1.5リッターで、ターボチャージャーによる過給が付く。それによって最高出力が高められているので、高速走行も楽だ。走り出しはディーゼルエンジンのよさがいかされていて、1.6トンほどあるドブロがスッと軽やかに動き出した。ディーゼルエンジンならではの騒音も耳に軽やかで、それほど気にならない。 ハンドル操作は軽く、思い通りに曲がれる快さがある。7人乗りのマキシ・ドブロは車体全長が4,770mmと5人乗りに比べて長いが、運転のしにくさは感じない。車幅は1,850mmとそれなりに広いものの、ビルの地下駐車場など狭くて圧迫感のあるところ以外では、クルマの大きさを意識させない身近さを感じた。路肩への幅寄せも容易だった。 もともと商用でも使うクルマとして設計してあるだけに、道路が込み入った都市部での使い勝手が悪いはずもなく、そこが乗用においても取り回しのよさとしていかされているのだろう。 乗り心地は快適だ。しっかりした手ごたえで信頼感がありながら、それでいて突き上げるような衝撃もない。商用と乗用で兼用の車体となると、かつては乗用専用に比べ乗り心地で不利な場面もあったが、ドブロにそうした心配は無用だ。同様のことは、新しいルノー「カングー」にもいえる。商用としての実用性と乗用としての快適性や走行性能が、よい方向で融合している。 高速道路に入り80km/hあたりになると、タイヤの接地感覚が増し、安定性がさらに向上した。これが、欧州車の味だ。欧州では郊外へ出ると80km/hで走れるため、そこで最大の性能を発揮するようクルマを仕上げる傾向が強い。さらに、欧州の高速道路は130km/hで走れるので、80km/hから上の操縦安定性に優れるクルマが多い。ドブロでも、そうした欧州風の走行性能を体感することができた。 高速道路では操作性が向上した運転支援機能を使ってみた。スイッチの操作方法については日本車のような丁寧さに欠ける面はあるものの、作動機能として文句はなく、高速での長距離移動が楽になるのは請け合いだ。 かつて、プジョーのリフターが発売されて間もなく試乗した際には、後ろのスライドドアの開閉がやや硬かったが、ドブロではより容易に開閉できた。 2列目シートの着座姿勢と座席の作りも優れていた。姿勢を正してきちんと座れるので、長距離移動でも疲れにくいはずだ。車内の静粛性が高いので、前席の人とも普段通り会話できる。 特筆すべきは3列目の座席の居心地のよさだ。足元にゆとりがあるだけでなく、床から座面までの距離が十分で、しっかりと足を下ろして座れる。なおかつ、3列目シートにも前後スライドとリクライニングの機能が付いている。