たったの240万円!? メルセデス・ベンツ「300 SEL 6.3」が格安だったのはシボレーV8に換装して80年代バブルなエアロを装着した魔改造車だからでした
レストアベースとするには、なかなか好適?
テイラー氏のコレクションガレージに属していた際、このメルセデスは屋内に長期静態保存されていたとのことながら、ボナムズ・オークション社の管理下に移されたあとには一度も走行しておらず、エンジンを再始動する前には一定のチェックとメンテナンスが必要とのことであった。 それでも「メカニズムの整備と選別を図れば、このユニークな300 SELには標準的な6.3を凌駕するポテンシャルが潜んでいる」という、かなり楽観的なPRフレーズを添えて、この300 SEL 6.3「改」に、ボナムズ社は9000ドル~1万4000ドル(約131万円~205万円)という、このモデルのマーケット相場に照らし合わせると、驚くほどに安価なエスティメート(推定落札価格)を設定。くわえて、今回の「AMG Rediscovered Online」オークションの前提条件にしたがって、「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」での出品となった。 この「リザーブなし」という競売形態は価格の多寡を問わず落札できることから、とくに対面型オークションでは会場の雰囲気が盛り上がり、ビッド(入札)が跳ね上がる傾向もある。その反面、たとえ価格が売り手側の希望に到達しなくても、自動的に落札されてしまうリスクも内包している。 そして、6月17日にはオンライン入札が解禁されたのだが、オークショネアと売り手の予測以上に入札が進み、1週間後の24日に入札締め切りとなったところで、エスティメート上限を2000ドル以上も上回る1万6100ドル、つまり日本円に換算すれば約240万円で落札されることになった。 現在の国際マーケットにおけるボリュームゾーンでは5~6万ドル、コンディションの良いものならば10万ドル超えも珍しくはない300 SEL 6.3としては、おそらく最下層に属する落札価格ではあるものの、たとえばメルセデスのベテランコレクターがレストアベースとするには、なかなか好適とも思われよう。 あるいは、ある種の「オモチャ」として入手し、そのまま手を加えることなく、毎年8月に北米カリフォルニア州の「モントレー・カーウィーク」期間中に開かれる「コンクール・ド・レモン(Concours d'Lemons)」あたりに参加するのも、きっと楽しいかもしれない……?
武田公実(TAKEDA Hiromi)