京王井の頭線「渋谷駅の1つ隣」神泉駅の不思議な風景 トンネルを一瞬だけ出てまたすぐ入る駅周辺の地形
渋谷と吉祥寺という、ともに若者が多く集まる東京のターミナルを結ぶ京王電鉄井の頭線。地上2階にある渋谷駅を出ると、列車はすぐにトンネルに入る。 【写真でわかる】京王井の頭線のターミナル渋谷駅からトンネルを抜けてすぐの神泉駅はユニークな場所にある。白黒写真が物語るかつての貴重な姿も ところが次の神泉駅の手前で、一瞬だけトンネルを出る。そこには踏切があるぐらいで、地上区間の長さは10mほどしかなく、再びトンネルに入って神泉駅に着く。 ■ちょっと変わった風景 各駅停車は速度を落としてこの区間を通るので、一部始終をゆっくり眺めることができるが、下北沢駅まで止まらない急行の車窓は、初めて乗る人にとっては不思議な光景に映るだろう。
このちょっと変わった沿線風景は、周辺の地形と関係がある。渋谷は名前のとおり谷の底に駅があり、井の頭線が進む西側には道玄坂があり、坂を登ったあたりは渋谷区円山町だ。円山町の区域はトンネルの出口のあたりまでで、神泉駅は神泉町にある。 【写真】京王井の頭線の都心のターミナル、渋谷駅からトンネルを抜けた1駅隣の神泉駅はユニークな場所にある(8枚) 渋谷区オフィシャルサイトによると、ここには湧水があり、仙人が不老不死の薬を練った霊水であることから、神の泉=神泉という地名になったそうだ。神泉谷という呼び名もあったようで、昔から窪地だった。
なので渋谷駅から急勾配を避けて西を目指すとなると、すぐにトンネルに入り、神泉谷で地上に出て、再びトンネルに入るのは、地形を考えれば納得できることだ。 神泉駅は井の頭線が開通した1933年から存在しているが、渋谷駅からの距離は約500mしかない。渋谷駅を中心とした半径1km以内にある唯一の駅である。井の頭線は全般的に駅間距離は短めだが、ここに駅が設けられたのは、一度地上に出ること、昔から生活の場であったことが大きかったのだろう。
ちなみに井の頭線のトンネルは、神泉駅の東西にあるこの2つのみである。踏切を挟んで渋谷寄りが渋谷トンネル、神泉駅のホームがある側が神泉トンネルと名付けられている。 ■昔はどんな姿をしていた? ただし神泉駅は昔から、今のような姿だったわけではない。1990年台中盤までは、ホームの一部が地上に出ており、駅舎は踏切の脇にあった。しかし列車の編成が長くなるにつれて、ホームをトンネル内に延ばしたものの、3両分しか確保することができなかった。