なぜ渋野日向子は全米女子OP最終日に首位転落したのか?
最終ラウンドではやや距離が縮められたものの、それでもアンダーパーで回ったのがキムら4人の韓国勢を含めた6人だけという難コース。月曜日に順延される原因となった前日の大雨で水分を吸ったフェアウェイはランが出ず、落ちどころによってはボールに泥が付着。拾い上げて汚れを取り除けるプリファード・ライも運用されないなかで最高気温も6度まで下がり冷え込み続けた。 前半だけでスコアを2つ落とし、気持ちを奮い立たせて臨んだバックナインの10番(パー4、397ヤード)ではフェアウェイ右へ会心のドライバーショットを放ちながらボールにべっとりと土が付着。重心が微妙に狂った状態で放たれたセカンドショットでパーオンができず、1.5mを残したパーパットをカップ右にわずかに外した瞬間に、2日目から守ってきた首位からも陥落した。 土が付着したボールを「辛かったですね」と振り返った渋野だが、凍えるような寒さも含めて、決勝ランドを戦うすべての選手が同じ条件下に置かれていることを思い出したのか。間髪入れずに「私だけじゃないですし、そう考えれば仕方のないことだと思います」と続けた。 その上で2位に3打差をつけて予選を通過しながら、3日目と最終日でともに3つずつスコアを落とし、最終的には2打差で頂点に手が届かなかった理由をメンタルの弱さに帰結させた。 「1日目と2日目を見ると自信を持ってもいいかなと思いましたけど、3日目と4日目になりプレッシャーがかかってくると、結局はショットをグリーンに乗せられないんだな、と」 正確性を欠いたショットは、パーオンの回数に反映されている。予選ラウンドは18ホール中で「15」および「14」で推移した数字は、3日目で「11」に、最終日には「7」へと著しく減少。特に最終日の前半は、ショートホールを除いた7ホール中でわずか一度しかパーオンを達成できなかった。
2番(パー4、397ヤード)ではティーショットを左ラフに打ち込み、さらに2打目を目の前の木の枝に当ててボギー。バーディーを狙いにいった5番(パー5、484ヤード)では、得意とする76ヤードの距離から放った3打目がまさかのトップ。グリーンをキャリーで超える痛恨のミスを犯してしまった。 もっとも、5番では4打目で絶妙のアプローチを成功させてパーをセーブ。ガードバンカーからのサンドセーブも2度とも成功させ、1パットでパーをセーブした、神経をすり減らすようなホールも6を数えた。快進撃を演じた昨年だけでなく、思うような結果を出せずに苦しんだ今年の秋までの戦いでも搭載されていなかった武器の存在に、渋野も手応えを深めている。 「いままでと違うのはアプローチショットを打つときの心境であるとか、パーパットを打つ心境というものがすごく変わってきている点だと思うので。この4日間でダボ(ダブルボギー)を打たないゴルフができたことは、すごく成長したのかなと思っています」 全英女子オープンで頂点に立って世界中を驚かせ、昨年の日本ツアーでも4勝をあげて賞金ランク2位となる原動力になった、例えるならば「イケイケどんどん」のゴルフでは勝てないと思い知らされ、悔しさを募らせ続けた日々で、渋野は新たな戦い方を自らに課してきた。 耐えて、耐えて、我慢を続けるなかでチャンスを見極めて、集中力を極限まで高めて貪欲にバーディーを奪いにいく。耐えるために必要なのがショートゲームであり、パットの正確性となる。これらを今大会で実践できたが、残念ながら爆発力は生み出せなかった。ここぞという場面で確実にパーオンを成功させ、スコアを伸ばしていくプレースタイルを来年以降に求めていくと渋野は前を見すえた。