マダガスカル王の頭蓋骨が祖国へ。フランスで可決された遺骨返還法が第一歩を踏み出す
フランスとマダガスカル政府は、1897年にフランス軍によって斬首されたマダガスカル王トゥエラの頭蓋骨と、サカラヴァ族の王の遺骨に対する法的所有権を巡るマダガスカルの主張を再検討するために、共同科学委員会の設置を発表した。トゥエラの斬首は、メナベ地方の部族地域で勃発した反乱を鎮圧するための軍事作戦中に起こった。フランスは1896年に正式にマダガスカルを植民地化し、マダガスカルは1960年に独立を果たしている。 トゥエラの子孫にあたるマリー・フランシア・カマミー王女は2024年3月の新年の祭りの最中に、フランス大使に向けて「マダガスカルの伝統では、先祖の遺体が墓の中で不完全な状態にあると、その魂はさまよい続けることになります。その場合、その人は子孫や民を守る守護霊としての役割を果たすことができません。だからこそ、私たちは家族として、彼の頭蓋骨の返還を求めているのです。それはマダガスカル人とフランス人の和解の証となるでしょう」と遺骨の返還を求めた。 この両国間の合意は、2023年12月にフランスで可決された人骨返還法に基づいた初めてのものであり、歴史的な第一歩となる。同法はフランスが所蔵している公的な考古学的コレクションや、かつての植民地で略奪した遺骨の返還を促進することを義務付けている。 フランスのラシダ・ダティ文化相はこの合意について、「同国の植民地時代の過去の一部を正すための重要な取り組みである」と述べた。マダガスカル側の代表であるヴォラミランティ・ドナ・マラは、王の遺骨の返還はマダガスカル国民にとって重要な一歩だと強調し、フランス議会のメンバーであるクリストフ・マリオンは「和解の行為」と表現した。 今後は、マダガスカルの要請を扱うフランスの検討委員会がパリ自然史博物館に保管されているマダガスカルとサカラバ族の2人の首長の遺骨の扱いに関する意見をフランス政府に提出し、その後政府は返還について決定を下す予定だ。
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