アメリカが打ち上げた新型宇宙船「オリオン」、何を目指しているの?
アメリカ航空宇宙局(NASA)が開発している新型の宇宙船「オリオン」の試験機が5日に打ち上げられ、無事地球に帰還して太平洋に着水しました。今回はたった4時間半の無人宇宙飛行でしたが、この「オリオン」でNASAは何を目指しているのでしょうか?
■2030年代に火星に人類を送る
宇宙船オリオンは、冬の星座のオリオンに由来します。誰もが知っている星座で、明るく見つけやすく、馴染みがあることから名付けられました。日本では宇宙船を「オリオン」と発音していますが、英語では「オライオン」と発音。 NASAはオリオンの計画について「これまで到達した以上に遠い場所に人類を運ぶこと」と説明しています。先日のミッションでは、宇宙船は高度5800kmに達しました(国際宇宙ステーションの高度は約400km)。これは有人用宇宙船としては、人類を月に送り込んだアポロ計画以降、最も遠い記録です。 これまで人が行った最も遠い場所は月ですが、それより遠い場所というのは、小惑星や火星です。つまり、人を火星に送り込むという壮大な計画なのです。無人なら、探査機「キュリオシティ」が火星で調査を進めていますし、日本の探査機「はやぶさ2」も月より遠い小惑星に向かっています。この計画は、有人であるというところがカギです。2020年代と2030年代にそれぞれ、小惑星と火星の有人探査を目指します。
■スペースシャトルとオリオン
オリオンの開発はロッキード・マーチンが担当。直径約5メートルで、重さは25トン。21日のミッションで4人が搭乗でき、それより短いミッションであれば6人が搭乗可能です。 有人宇宙船と言えば、退役したスペースシャトルを思い浮かべるかもしれません。スペースシャトルの活躍によって数々の科学実験が行われ、国際宇宙ステーションの建設も進みました。スペースシャトルの飛行は、地球の低い軌道を飛行しましたが、これに対して、オリオンは月のさらに向こう側を目指します。 スペースシャトルもそうですが、有人宇宙船は、行ったからには必ず帰ってこなければなりません。先日の打ち上げでは、宇宙船が大気圏に突入して2000度を超える温度に耐えて帰還できるかどうかや、パラシュートが開くか、宇宙放射線が電子機器に与える影響も調べられました。スペースシャトルは何度も“使い回し”をしましたが、オリオンは一度限り。 スペースシャトルには事実上存在しなかった、ロケットの打ち上げに失敗したときの「打ち上げ脱出システム(LAS)」も開発されています。これはロケットの先端に宇宙飛行士が乗った宇宙船が取り付けられています。打ち上げ時にロケットに異常があっても、その先端だけを空中に切り離して乗組員の安全を確保するというものです。今回、帰還して回収されたオリオンは、このLASののテストに再利用されます。