【イメージディレクター ORIHARA】「Ado」のビジュアル、「てにをは」のMVを「ファッション」で読み解く
衣装、ヘアデザイン、仕草や色使い。作家たちは「ファッション」をどう吸収し、作品を生み出しているのだろうか。 本記事ではイメージディレクター「ORIHARA」に取材。Adoをはじめ、ボカロP「てにをは」、カプセルトイ『女子図鑑シリーズ』、大丸松坂屋アバターのデザインなど多岐にわたるヒットコンテンツにビジュアルを提供している。 キャラクターから放たれる力強いまなざしで時代を魅了する、特徴的な絵柄。そのインスピレーションの源と「イメージディレクター」としての仕事観について、ファッションの視点で聞いた。
「イメージディレクター」の誕生まで
ーORIHARAさんが作品制作をはじめたきっかけを教えてください。 小学校1年生からインターネットに触れていて、5、6年生になって好きだったマンガやアニメの物語を描き足す二次創作をはじめたのが最初です。 投稿サービスでイラストとマンガと小説の投稿をほぼ同時にはじめたのが00年代の後半で、Twitter(現:X)はまだそこまで普及していない時期でした。SNSより投稿サービスのほうが活気があって、ユーザー同士で絵や物語を通して交流するのが楽しくて。 はじめは好きなマンガのサイドストーリーを描いた覚えがあります。絵は独学で、『家庭教師ヒットマンREBORN!』の天野明先生、『D.Gray-man』の星野桂先生、『ぬらりひょんの孫』の椎橋寛先生、『カゲロウプロジェクト』のしづさんなどに影響を受けました。 そのあと、「創作企画」[1]でも遊ぶようになったんです。特に有名なのは「学生戦争」という企画でした。
ーSNS以前の二次創作カルチャーがルーツということですね。 はい。誰かが創った物語や設定を読み込んで解釈しながら、自分でその隙間を埋めていくような遊び。今のイメージディレクターとしての活動にも通じるところがあると思います。
ー「イメージディレクター」という仕事は、ORIHARAさんより以前は聞くことのなかった呼び名です。Adoさんとの出会いがきっかけだったかと思いますが、なぜこう名乗っているのでしょうか。 「イメージディレクター」は、Adoさんのチームの方々と相談して決めた名前です。まず仕事の内容を説明する必要がありますね。 イメージディレクターは、アーティスト本人のビジュアルをさまざまな方法で補う仕事なので、正確には「専属イラストレーター」ではないんです。 一方で本人とまったく違うキャラを創るわけでもないから「キャラクターデザイナー」とも違う。現実に生きているアーティストと本人が思い描く理想の姿との間を探っていく……という仕事です。 ーファンアートとも異なりますよね。 私は、もっとも近いのは「メイク」だと思うんです。アーティストは顔を表に出していなくても私たちと同じように生きていて、生まれながらの顔や体を持っています。 年齢も重ねていくし、気持ちも変わっていく。そのなかで見せたい部分を大きくしたり、コンプレックスを隠したりしながら、まったく別の人には変えない。それが「現代のヘアメイクでありスタイリスト」だと考えています。 ーすぐれてファッション的です。 そう考えたときに「クリエイター」という呼び名にも違和感がありました。「自分の正解を探る」というより「相手の正解を探る」ことが本質だから「ディレクター」と名乗っています。 本人にもっとも似合う姿をクリエイティブで創り、守りあげていく仕事。「その人の幸せをひたすら思い続ける仕事」とも言っています。