<安保法制>自民党・岩屋毅議員に聞く「戦争法案ではなく戦争回避法案だ」
戦争に巻き込まれる「戦争法案」なのか
── 野党は、戦争に巻き込まれる「戦争法案」だと批判しています。 岩屋:いや、戦争法案どころか、戦争回避法案だと思いますよ。昔は、飛んでくるミサイルをミサイルで撃ち落とす技術が無かった時代です。今では、サイバー空間も宇宙空間も、さまざまなリスクにあふれている。安全保障環境は変わったのです。 それから、残念ながらテロ集団が跋扈していて、3回続けて日本人が犠牲になるという事件が起きました。もはや、どの国も一国では自分たちの平和を守れないのです。だから日米同盟を強固にし、オーストラリアなど、他の国々とも安全保障の協力関係をしっかり作る。最終的には、協力関係が縦・横・斜め、網の目のようになっていくことによって、地域は安定していく。そのために、自衛隊が憲法の許す範囲でできることをしっかりやっていく。今回の法案は、紛争を防止する、抑止する、戦争を回避するための法案なのです。
自衛隊員のリスクは増すのか
── 自衛隊ができることが増えるが、隊員のリスクは増えますか。 岩屋:自衛隊の活動する範囲、あるいはその活動内容が拡充されるのは事実ですから、リスクが高まる可能性はあると認識すべきだと思います。そう認識しているからこそ、法律・制度の面でも、運用面でも、今まで以上の対策をしっかり盛り込んでいるわけです。そう説明しないと、国民の皆さんの不信を買うことになる。常識的に考えれば、活動範囲は広がり、やれることも増えているのですから、危険をどうやって防ぐのか、防いでいるのか、という議論をすることが大事です。 ── 具体的に、自衛隊は新たに何ができるようになるのですか。 岩屋:周辺事態法は重要影響事態法という名前に変えました。周辺事態で想定していたのは、先ほど申し上げたように、朝鮮半島有事です。それは今でも大きなリスクですが、有事がわが国の周辺だけで起こるわけではありません。危機管理に想定外は許されないわけですから、もう地理的な範囲は定めないようにしましょう、ということです。事態が起こり得る可能性を、政府があらかじめ一定の地域に限定するという考え方は、危機管理法制としてはおかしいのではないか、と。存立危機事態についても同じです。だからと言って、すぐに自衛隊が世界中に出て行くという話ではない。わが国が自衛権を行使できる、つまり武力を行使できるのは、あくまでもわが国の自衛のためだけです。 そのほかの自衛隊の全ての活動は、自衛権とは関係のない活動です。「武力の行使」と「武器の使用」はまったく違う概念で、武力の行使と名が付けば、これは自衛権の世界の話です。これまでも個別的自衛権は当然に持っていました。自分の国が攻められたら当然反撃しなきゃいけない。これに、わが国を守るために必要最小限の、やむを得ない集団的自衛権の行使の一部をくっつけたのが今回の法案で、これが武力行使の世界、自衛権の世界です。 そして、自衛隊の隊員がわが身を守るために、あるいは一緒に活動するNGOの職員の方々を守るために、必要最小限において「武器の使用」を行うことができるとしています。これも、自動的に武器を使うのではなくて、まさに自己保存、正当防衛、緊急避難のためには最小限使ってよい、ということを決めているだけなのです。 要するに、武力の行使にしても武器の使用にしても、今まで以上に使用権限をを大きく拡大している法案ではありません。