<安保法制>自民党・岩屋毅議員に聞く「戦争法案ではなく戦争回避法案だ」
── 時の政府が新3要件に当てはまると考えれば、行使できるのですね。 岩屋:そうです。例えば、朝鮮半島で軍事紛争が起こると、アメリカは韓国との米韓同盟により、韓国の支援に入ります。そして、わが国の米軍の基地から韓国に向けて米軍が支援に入っていきます。この事態は、わが国にとってはまず、重要影響事態といっていいでしょう。火の粉がかぶってくるかもしれないわけですからね。北朝鮮は数百発のミサイルを持ち、日本列島はその射程の中に入っているわけです。核の開発をやり、化学兵器も持っているとも言われています。この事態では、イージス艦でもって、ミサイル防衛体制を築くというのは米国と日本の共同のオペレーションになるでしょう。 アメリカの衛星が、北朝鮮がどの方向にミサイルを打ち上げて、どこに落ちそうだ、という情報を日本とアメリカのイージス艦に伝え、両方で迎え撃つという態勢を取る。その時、アメリカの船がバンバン攻撃されてしまったらどうなるか。このミサイル防衛体制を崩されれば、わが国に雨あられのごとくミサイルが降ってくるかもしれない。そういうときにアメリカの船に加えられている攻撃を最小限排除するという自衛権は、国際法的には集団的自衛権となるんですよ。日本は攻撃されておらず、同盟国だけが攻撃されている。しかし、これを排除しなければわれわれにも深刻重大な被害が及ぶかもしれません。この場合の集団的自衛権は、憲法の許す範囲内なのではないかと考えているのです。 だから、極限の事態というのはいくつか想定できますけれども、頻繁に起こりうる事態ではないし、そんな事態に陥ったときに、手段がないから国民を守れないのではいけない。その隙間を埋めていこうという法案なんです。
停戦前のホルムズ海峡の機雷掃海
── ホルムズ海峡の機雷掃海の例についてはどうですか。 岩屋:湾岸戦争が終わったあとに、日本は遺棄機雷の掃海に行きました。戦争は終わっていたわけですから、新しい法律がなくとも、今の自衛隊法の条文に基づいて作業はできた。しかし、万が一、紛争は最終的な停戦合意に至っておらず、内陸の一部で戦闘は続いている場合はどうか。ホルムズ海峡が機雷で封鎖されれば、日本は海峡を通じて8割の石油と2割の天然ガスを輸入しているわけですから、6カ月の備蓄があると言っても深刻な状況になります。世界中に影響が及ぶと思います。国民の生死に関わるような深刻な状況になれば、停戦になっていなくとも、機雷を取り除くことができるようにしよう、ということを言っているだけなんです。 日本は6カ月分の備蓄があるし、場合によってはその他の地域からある程度のエネルギー資源を調達できるかもしれません。他に手段があれば、停戦前にわざわざ行く必要もない。紛争が終われば自衛隊法でいつでも行けるのですから。 しかし、最悪の条件が重なって、停戦前に機雷掃海をしないといけない場合は、国際法的には武力行使の一形態とみなされますので、これはもう集団的自衛権で説明するしかない。わが国の存立を脅かし、国民の生存権が危うくなったときに限って出て行く、という話をしているだけです。機雷がまかれたら、自動的に、無理やりにでも掃海艇を派遣しようということではない。