<安保法制>自民党・岩屋毅議員に聞く「戦争法案ではなく戦争回避法案だ」
抑止力強化で緊張が高まらないか
── 日米同盟の強化によって抑止力を確保するとの話がありました。中国に対抗する事で、逆に緊張が高まるというリスクはありませんか。 岩屋:安全保障のジレンマという話ですよね。こっちが抑止力を高めれば、相手国はさらに対抗しようとして、軍拡競争が激しくなり、かえって緊張が高まる。これが安全保障のジレンマです。 もちろん、そうならないように、抑止力の強化とともに、外交努力も進めなくてはいけません。日中の対話もようやく再開できたところです。また、日米韓の防衛相会談も実現しましたし、韓国とも早く首脳会談ができればいいなと思っています。 尖閣周辺をめぐっては、いつもにらみ合いが続いています。中国の船から自衛隊の艦船に、射撃用のレーダーが照射されたり、ぶつかってもおかしくない距離で中国の戦闘機が日本の航空機に近づいてきたりする。万が一、間違って衝突が起こったら大変な緊張が走ることになる。そこで、いわゆる、連絡調整メカニズム、不測の事態を避けるための、連絡のためのメカニズムを作ろうじゃないかとずっと前から言っていますが、ようやくその協議も再開しました。そういう外交努力が一番大事なんです。一方で、万が一のときには、こちらにも備えはありますよ、日米同盟は抜かりはないですよ、という姿勢を持っておくことが必要です。それによって、最終的には、紛争の可能性というのを低減させていくということが、一番大事な目標なのです。
海外派兵はできるのか
── 総理は海外派兵はしないと説明していますが、重要影響事態法の想定としては海外に行く可能性もあります。国民の間には、「結局どうなんだろう」という不安がある。正々堂々と説明すべきだ、という声もあります。 岩屋:海外派兵でいえば、総理は、ホルムズ海峡での機雷掃海というケースについては、極めて例外的に考えておられると思います。今までの自衛権発動のための武力行使の3要件も、今回の3要件も、他に手段がなく、必要最小限でなければならない、と定めております。海外に大量の要員を送り込んだり、大量の航空機で爆撃をするとか、地上戦闘を大規模に行うとかいう、いわゆる海外派兵は、そもそも憲法が許す必要最小限の自衛権行使には当たらないと。だから、総理は、海外派兵はしないと言い続けているわけです。 今、想定される唯一の例外が、ホルムズ海峡が封鎖された場合の機雷掃海なのです。ホルムズ海峡は狭いところが幅30キロぐらいしかなく、公海はないのですよ。イランかオマーンの領海になるわけです。もし、海峡が封鎖された場合は、領海に入って機雷を取り除かなきゃいけない。当然に沿岸国の同意を得ることになりますが、機雷掃海のような静かな作業であっても、国際法的には武力行使と見なされます。だから、武力行使をすると言われてしまえそうですが、ホルムズ海峡の場合は例外ですよ、というのが総理の説明なのです。 個別的自衛権について、昔、国会の答弁がありました。ミサイルが日本に向かって飛んでくる可能性があり、ミサイルを飛ばす敵の基地を攻撃しなければ日本は座して死を待つだけになる場合は、どうすればいいのかと国会で質問があった。それに対しては、万が一の場合はその他国の基地を攻撃することも、憲法の許すところです、との答弁があるのです。その理屈で言えば、集団的自衛権でも、もう本当に他に手段がない、そこを攻撃するしか日本を守れないというときは、理屈の上では行使は認められるでしょう、ということです。 しかし、3要件にあるように、他に手段がなく必要最小限でなければならないと考えれば、ほとんど他国の領海に行くということはあり得ない。大規模な海外派兵なんてことも、これからもしませんと。ただし、ホルムズだけはちょっと例外ですよね、と。こういう説明をしてきているわけですね。