<安保法制>自民党・岩屋毅議員に聞く「戦争法案ではなく戦争回避法案だ」
集団的自衛権の行使は違憲か
── 昨年7月の閣議決定で集団的自衛権の行使を容認したことについて、野党は、決定は立憲主義に反し、専守防衛の理念を変えてしまうものだと批判しています。 岩屋:閣議決定では、わが国を守るための限定的な集団的自衛権であれば、憲法の許す必要最小限の自衛権の中に含んでいいのではないかという見解を出しました。これまでの政府の論理を継承した上で出した結論です。 今までは、政府は一貫して、集団的自衛権は国際法上は持っているが、憲法上は使ってはいけないもの、「持ってはいるけれども使えない権利」だとしていた。しかし、今日の安全保障環境の変化や軍事技術の進展を踏まえた場合に、集団的自衛権と名がつくものは何でも使うことができないということでは、日本の平和と安全を守れないのではという議論を、第1次安倍政権のときから7年間に渡って続け、自民党の中でも続けてきました。党の結論は、わが国を守るために、やむを得ず行使しなければいけない場合で、かつ必要最小限であれば、集団的自衛権は憲法の許す範囲内に含まれるとの結論を出した。それで、自民党は衆議院選挙でも参議院選挙でもそのことをうたって、政権に戻ればそれを立法化することも公約にして戦って、今日まできました。今までの政府の説明の論理との整合性をきちんと取った上で、必要最小限の集団的自衛権に限って行使を認めたのです。
武力行使の新3要件
── 集団的自衛権の行使の条件である武力行使の新3要件については、政府の裁量が大きすぎるという指摘があります。 岩屋:新3要件のうち、特に第1要件。わが国が攻撃された場合、もしくはわが国と密接な関係にある国に対する攻撃によって、わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に限って、集団的自衛権を使えるようにしようということです。 言葉としては非常に長い。なぜかというと、この文言は、これまでの政府見解の大本になってきた昭和47年の見解の言葉と論理をそのまま入れているからです。集団的自衛権という言葉は、もともと国連憲章にある言葉で、そこでは全ての加盟国に個別的自衛権ならびに集団的自衛権が認められています。国連加盟国すべてが集団的自衛権を持っているわけです。この一般的な集団的自衛権に、新3要件のような厳しい歯止めをかけている事例は世界にないと思います。 しかも、政府は答弁で、存立危機事態は、わが国が武力攻撃を受けたと同様の深刻・重大な被害が及ぶ事態としており、これだけでも集団的自衛権をかなり厳しく縛っている。 通常、集団的自衛権というのは他国を防衛するための自衛権のことです。極端に言えば、同盟国が攻撃されたら、地球の裏側にまで行ってでも、同盟国に対する攻撃を排除するということにもなりかねないものです。しかし、今回の法案の集団的自衛権は、そうした一般的な国連憲章が認めている集団的自衛権に比べると、かなり概念を絞り込んだ自衛権なのです。