画期的な「がん治療」に道 基礎研究から花開いた本庶氏のノーベル賞
これからの日本の基礎研究はどうなる?
今回の受賞テーマは、「免疫細胞の表面に存在する未知のタンパク質の働きを明らかにする」という純粋な基礎研究から始まり、応用研究を経て、現在は、がん患者の治療に大きく貢献しています。これまでのノーベル賞受賞者と同様、本庶博士も、受賞直後のスピーチや折に触れ、基礎研究の重要性を訴えていますし、若手研究者を支援する「本庶佑有志基金」が設立されました。その背景にあるのは、若手研究者を取り巻く研究環境の悪化や、基礎研究費の削減による日本の研究能力低下への危機感なのではないでしょうか。 生命科学のブレイクスルーは、先人たちによって積み上げられてきた、幅広く地道な研究の積み重ねの先にあるものです。最近は、日本人がノーベル賞を受賞することも珍しくなくなりましたが、それも先人たちの積み重ねがあってこそ。日本の研究の国際競争力低下が叫ばれる中、現在の研究環境が続いたとすると、今後はどのような未来が訪れるのでしょうか。 ノーベル賞授賞式は、スウェーデンのストックホルムにて、12月10日午後4時30分(日本時間12月11日午前0時30分)から始まります。本庶博士の授賞式のスピーチでは、これまでの研究の振り返りはもちろん、今後の研究のあるべき方向性や、若い人々へのメッセージなども語られるでしょう。その様子は、ノーベル財団のホームページ(参考2)でもストリーム配信されますので、興味のある人は視聴してみてはいかがでしょうか。
【参考資料】 (1)国立がん研究センター がん情報サービス「免疫療法 まず、知っておきたいこと」 (2)ノーベル財団のホームページ「Live video during Nobel Week」
◎日本科学未来館 科学コミュニケーター 毛利亮子(もうり・あきこ) 1975年、福岡県生まれ。専門は生命科学。遺伝子と行動との関係を明らかにするべく研究に没頭。子育てを機に、科学と社会をつなぐ人になりたい!と、科学コミュニケーションの世界に飛び込む。2016年より現職