「クリスマスも正月も祝う」日本の不思議な価値観。神道、仏教、キリスト教と多様な宗教が受け入れられた背景
■神道も仏教も日本の統治に必要だった この対立こそ、いわゆる「崇仏論争」と呼ばれる争いです。最終的には蘇我氏が勝利し、先にも触れた通り、現在の仏教と神道が結び付いた日本の不思議な宗教観になったというわけです。 神道と仏教は、両方とも日本の統治に向いていました。神道は、天皇の威光を示すために必要でした。そして、人々が規律を守って生きるために、「不殺生(生き物を殺してはならない)」という仏教の考え方も必要だったのです。
このように、必要なもの同士が手を取り合うことで、現在の日本の独特の宗教観が形成されたと考えることができます。 少し時代が飛んで、戦国時代から江戸時代にかけて、今度はキリスト教が日本に到来しました。イエズス会のフランシスコ・ザビエルをはじめとして、宣教師たちによってキリスト教が広められたのです。 ところが、キリスト教の場合、仏教とは違って神道と融合することはありませんでした。神道だけでなく、キリスト教は仏教とも融合していません。
その理由は、いろいろと考えられますが、有力な説としては、「仏教と神道が共に多神教なのに対して、キリスト教は一神教だった」ということです。 仏教も、神道も、複数の神様を信仰しています。日本において仏教と神道、ともに信じる人が多かった理由の1つは、「(多神教であるため)仏教を信じるからと言って、神道を捨てることにはならなかったから」と考えられるのです。 それができたからこそ、仏教と神道は両方日本で受け入れられてきたわけです。
■1つの神を信じるキリスト教 ところが、キリスト教を信じることは、複数の神様ではなく、1つの神様のみを信じなければならないことを意味します。つまり、神道や仏教は捨てなければならないということです。そのため、キリスト教は日本の宗教との融合は進まなかったと言われています。 しかし、逆に言えば、日本人は多様な宗教を受け入れてきたからからこそ、同時に「キリスト教も受け入れる」ということができたのではないかと言われています。
今、キリスト教のしきたりも日本人の文化として受け入れられているのは、こうした理由からなのではないかとされています。 いかがでしょうか? 年末年始のシーズンは、さまざまな宗教に触れることが多い時期です。こんな時期だからこそぜひ、改めて歴史を学んでみてもいいのではないでしょうか。
宇野 仙 :駿台予備校地理科講師