「好きだったドラマに「?」が生まれたら」作家・柚木麻子が語る、時代を映す鏡としてのドラマ【インタビュー後編】
――ドラマは、まさに時代を映す鏡なのだなと、本書からも、今日のお話からも感じました。今、国内外の情勢がさまざまに揺れ、不安やおそれを抱える人も多いなか、ドラマを通じておすすめしたいことはありますか。 柚木:今、世の中全体に絶望感が漂っていますよね。私も、どうしたらいいんだろうって、目の前が真っ暗になるような気持ちになるときはあります。 でも、そういうときこそ、一度、過去のドラマを観てみてほしいなと思います。もうね、びっくりするほど非常識で、ハラスメントの嵐みたいな作品も多いんですけれど、その作品があったからこそ「今」があるのも確かなんです。 今とその時代との間でどんな法律が生まれ、どんな社会運動が起きていたのか。その影響によって、どういう変化が起きたのか。ドラマを通じても発見できるものがたくさんあると思うんです。 ――動けば社会は変わるという希望と、今後変えていくためにはどうすればいいのかのヒントが見つかるかもしれない。 柚木:そう思います。たとえば『TVタックル』に出ていた当時の田嶋陽子さんは、ヒステリーな女性として扱われていたけれど、今観ると、全然そんなことはなくて、単なる印象操作だったことがわかります。 同じように、「昔はみんなが納得して受け入れていた」みたいな有害性のある思い込みが、実はそうでもなくて、抗って戦う人たちがたくさんいたのだという証も、ドラマのなかには残っていたりする。今の時代に作られた良質な作品だけでなく、20年くらい前に、当時の女性たちが絶賛していた作品に触れると、逆にエンパワメントされるものがあるはずだと思うので、配信などでぜひ探してみてください。
取材・文=立花もも、撮影=金澤正平