この夏のヒアリ対策 上陸を徹底阻止し、万一の定着にも備える
そこで、国立環境研究所では、より迅速にヒアリを発見するために、LAMP法(Loop-mediated isothermal Amplification)というDNA技術を活用したヒアリ検出技術を新たに開発しました。LAMP法とは、特定の種のDNA断片を特異的に増幅して検出する技術で、我々はヒアリのDNAにだけ反応する試薬を開発して、ヒアリが1匹でも(足1本でも)存在したら検出できるというシステムをパッケージ化することに成功しました。
このヒアリDNA検出技術を使用すれば、野外において捕獲されたアリが、ヒアリであるか否かを、数時間のうちに確認することが可能となります。国立環境研究所ではLAMP法に必要な器材や試薬をセットにした「ヒアリDNA検出キット」を作成し、5月より全国10地点の試験研究機関に配布して、実働試験を行い、再現性の確認を行う予定にしています。 キットが完成して、全国各地に配備することができれば、ヒアリ野生化の早期発見に貢献できるとともに、市民の安心・安全にも繋がり無益な薬剤の過剰散布も避けることができると期待されます。
オールジャパンでヒアリの侵入阻止を
グローバル化が進行する中、我が国のヒアリ侵入リスクは今後もますます高まってくると考えられます。国立環境研究所では、この7月から「ヒアリ対策研究プロジェクト」を立ち上げ、専門の研究チームを編成して、ヒアリのモニタリング体制の強化、早期発見技術の高度化、防除手法・戦略の開発、および日本全国レベルおよびアジアレベルでの防除連携システム構築などヒアリ対策のための課題に対して総合的な取り組みを進めていく方針です。 (五箇公一 国立研究開発法人 国立環境研究所 生態リスク評価・対策研究室室長)