この夏のヒアリ対策 上陸を徹底阻止し、万一の定着にも備える
ヒアリの水際対策の強化
まず、港に陸揚げされる輸入コンテナに紛れ込んでくるヒアリを如何に一網打尽で駆除するかという水際防除の高度化が第一の課題となります。問題は、コンテナのチェックを如何に短時間に効率的に行うか、そして、もれなくヒアリを見つけるか、ということになります。現時点での環境省の「マニュアル」では、コンテナ開封時にアリが見つかったら、まずそのアリのサンプルを採取して専門家に送り、同定が終わるまでコンテナを厳封して、荷物を留め置く事になっています。 しかし、高速かつ大量の物流で経済が成立している日本において、1日でもコンテナの開封・移動を遅らせることは、大きな経済損失に繋がります。特にコンテナ内の荷物の荷主にとっては死活問題と言っても過言ではありません。こうなると最悪、物流の現場でヒアリらしきアリが見つかっても、荷物が止まることを避けるために「見て見ぬふり」をされてしまい、知らない間にヒアリが内陸へ持ち込まれてしまう恐れも生じます。 コンテナのなかをいちいち点検して、さらに、見つかったアリを同定するというプロセスを踏んでいたのでは時間がかかり過ぎることから、国立環境研究所では、輸入コンテナ全てについて、到着後すぐに開封して、家庭用の「ワンプッシュ方式」合成ピレスロイド殺虫剤を開封口から噴霧して、すぐにまた封をする、という「コンテナ内全処理方式」を検討しています。この方法が実現すれば、点検作業・同定作業という手間が省けるとともに、ヒアリのみならずコンテナ内に紛れて海外から持ち込まれたすべての昆虫類を防除することが可能となり、新たなる外来種の侵入も防げると期待されます。 何より家庭用殺虫剤なので現場の検査担当者も常時携行して、手軽に処理することができるという利点があります。現在、国立環境研究所では殺虫剤メーカーと共同で薬効試験を進めてデータを収集し、環境省と実用化を協議しています。