これが無いと、私たちの身体はすぐバラバラに…宇宙で最も重要な「強い力」の正体とは
私たちが生きていられるのも「強い力」のおかげ
では、私たちはなぜ、重力が大きな力だと勘違いしているのでしょうか。 電磁気力にはプラスとマイナスがあり、お互いを打ち消してゼロになることが多いのに対して、重力は引き合う力しかないので、打ち消し合うことがありません。また、質量が大きくなればなるほど重力は大きくなります。私たちは、大きな質量をもつ地球の上で暮らしていて、地球の重力を常に受けているので、重力が大きな力だと感じているのです。 ちなみに、電磁気力と強い力の関係も重要です。強い力が電磁気力よりも小さかったら、クォーク同士をくっつけて陽子や中性子をつくることができません。 電気はプラス同士、マイナス同士が狭い空間にあると反発します。陽子の中にはプラスの電気をもったアップクォークが2個あり、中性子の中にはマイナスの電気をもったダウンクォークが2個あるので、反発して離れようとしています。でも、離れずに陽子や中性子をつくれているのは、強い力が引きとどめてくれるからです。陽子や中性子がバラバラになっていたら、私たちの体をつくる原子ができなくなってしまいます。 私たちが生きていられるのも、強い力があるおかげです。
力の運び役としての素粒子たち
この宇宙に存在するものは素粒子でできています。実際、原子をつくる素粒子と、それによく似ている仲間の素粒子が発見されました。実は、素粒子にはもう1つのグループがあります。それが、力を伝える素粒子たちです。4つの力は、それぞれ異なる素粒子によって伝えられます。 磁石が鉄を引き寄せるときは、磁石と鉄の間で電磁気力を伝える「光子」という素粒子がキャッチボールのように交換されることで、力が働きます。電磁気力の場合は、電気の符号によって異符号なら引き寄せ合い、同符号なら反発します。 強い力が働くときも、いくつかのクォークの間で強い力を伝える素粒子「グルーオン」が交換されることで、それぞれのクォークに関係が生まれ、くっつきます。 弱い力の場合は、例えば、中性子の中のダウンクォークに弱い力を伝える負電荷の「W粒子」が働いて、中性子を陽子に変化させます。また、弱い力を伝える「Z粒子」も見つかっています。 クォークや電子など、ものをつくる物質素粒子の仲間は、グルーオン、光子、W粒子、Z粒子といった力を伝える素粒子を交換することで、お互いに関係ができ、それらの素粒子の間で力が働いて素粒子の状態を変えます。 今のところ、4つの力のうち、電磁気力、強い力、弱い力の3つでは力を伝える素粒子が発見されています。重力にも力を伝える素粒子が存在すると考えられており、一応「重力子」という名前がつけられているのですが、まだ発見されていません。 * * * さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする。
高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所